「終活」に関する生前の契約にはどのようなものがありますか?

前回,「任意後見契約」について,「法定後見制度」との違いに着目しながら解説しました。

シニアの方とお話しをしていて間違われやすいのは,「任意後見契約」も「判断能力が低下したときに契約する,そして後見人を選ぶ」というように,「法定後見制度」と混同していらっしゃる方が多いようです。こんな感じです。

 シニア:「判断能力が低下したら,後見人を選ぶことができないでしょう?」

わたし:「判断能力が低下する前に契約するのが「任意後見契約」。発動するタイミングが,判断能力が低下してからになります。判断能力が低下してしまった後の制度が「法定後見制度」と覚えましょうね。」

ざっくりいうと,「低下する前」が「任意」,「低下した後」が「法定」という区分です。発動はどちらも判断能力が低下した後になります。参考にしてください。

今回は,主な生前契約の種類を概括していきましょう。

1.見守り契約(サービス)

目的は,判断能力に衰えのない時期から,将来に判断能力が衰えた場合の備えを始めていくことです。

そのため,受任者は定期的に依頼者と連絡を取り,体調変化,精神的安定性等を確認し,老後の生活の希望や,近々予想される生活設計上の分岐点,例えば施設への入居の準備などをタイムリーに把握して依頼者にアドバイスします。

追加で「緊急時の駆け付けサービス」を組み込むと,より安心を高めることに繋がります。

2.財産管理・事務委任契約(サービス)

目的は,見守りに加え,財産管理に不安な依頼者に対して通帳等を預かり依頼者の財産を適切に管理するものです。任意後見契約とセットで締結される場合が一般的です。

依頼者が元気なときに,財産管理の範囲・方針等を事前に契約で定めておきます。受任者は契約に基づいて財産を管理しその事務を執り行います。判断能力自体に問題のない段階までは,継続していくことができます。

しかし,本人の判断能力が低下した場合,本人の第三者に対するチェック機能が不十分になるリスクがあります。

そこで,移行型の任意後見契約を同時に締結しておきます。「移行型」とは,財産管理契約を締結して,受任者が財産管理を行い,本人の判断能力が低下した後に任意後見契約を発効させて任意後見人が財産管理を行うとするものです。

3.任意後見契約

<「任意後見契約」と「法定後見制度」との違いは,どのような点ですか?」>https://hosoda-gyosei.com/blog/ninnikouken/

4.身元保証契約(サービス)

目的は,身寄りがいない,若しくは頼れるご家族がいない高齢者の方に対し施設・病院との間で身元保証人に就任して,施設や病院に入居・入院してもらうものです。

高齢者施設への入居や病院への入院の際などに必要となるのが「身元保証人」です。いざ,施設に入居したいとなっても,近くに頼れるご家族がいない場合や身寄りがない方にとって大きなハードルになります。このような事態に対応するために,入院時や施設入居時の身元保証人となるものです。保証料と対応料が発生します。

5.家族信託契約

目的は,自分の財産の一部の処分・管理を,元気なうちに信頼できるご家族に託して,自己または第三者のために活用することです。

高齢者本人が委託者,委託者の家族・親族が受託者となり,財産を信じて託す信託契約で,委託者と受託者との契約により設定します。

認知症によって,預金口座が凍結されて生活資金が捻出できなくなったり,自宅不動産を売却できず施設への入居費用を賄うことができないというリスクを回避すること可能となります。近年,たいへん注目されている生前対策です。

本人が認知症になっても契約は有効ですので,生前死後と通じた財産管理・承継制度として活用できます。

6.生前贈与

生前のうちに「現金・預金」「不動産」などの財産を譲り渡すことを指し,一般的に「相続税対策」や「家族の不動産購入支援」などを目的に行われます。

相続税対策として生前贈与を行う場合,税理士などの専門家と一緒に,相続税と贈与税の全体像を確認したうえで有効な手続きを検討していくようにしましょう。

7.遺言書

詳しくはこちらのブログ記事を参照⇒https://hosoda-gyosei.com/blog/%e4%ba%a1%e3%81%8d%e6%af%8d%e3%81%ae%e3%80%8c%e9%81%ba%e8%a8%80%e6%9b%b8%e3%80%8d%e3%81%8c%e4%bb%8f%e5%a3%87%e3%81%8b%e3%82%89%e5%87%ba%e3%81%a6%e3%81%8d%e3%81%9f%ef%bc%81%e9%96%8b%e5%b0%81%e3%81%97/

「遺言」はたいへん良く知られている生前対策です。目的は,遺言者(本人)の財産を,死後に最も有効・有意義に活用してもらうために行う遺言者の意思表示であり,相続争いを防ぐことができます。

遺言書は「誰に」「何を」「相続させる」を指定する法律行為です。遺産分割の指定はエンディングノートでは効果がありません。法的に有効となるのは遺言書のみですので,内容については慎重に検討しましょう。

相続人が複数人存在している場合に遺言書を作成せずに亡くなると,次のような問題が起きかねません。

①相続人同士の遺産分割がまとまらない。遺言書がない場合,相続人による話し合い「遺産分割協議」を行いますが,相続人が多い場合,相続人同士が疎遠で話し合いがまとまらない可能性もあります。

②自宅不動産しか遺産がなくて,自宅で奥さん(配偶者)が生活している場合,自宅を追い出されるなどの大問題になりますので,遺言書を必ず作成しておきましょう。

③関係性の悪い相続人がいる場合には,遺産分割を巡ってトラブルに発展してしまいがちです。

遺言書を作成するときに,注意しなければならない点に「遺留分」があります。「遺留分」とは,法律によって定められた相続人が必ず相続できる最低限の相続分です。遺留分を侵害された相続人は,遺留分を相手に請求できます。これを「慰留分侵害額請求」といいます。

遺言書は,行政書士などの専門家に相談して検討していくようにしましょう。

8.死後事務委任契約

目的は,自己の葬儀・供養その他の事務手続きについて,生前に第三者に委任して死後に実行してもらうものです。相続財産の処分ではないため遺言では手当できません。また,後見人も対応できません。

通常,自己の死後の諸手続きについては,相続人が相続手続きの中で行うことになります。しかし,そもそも相続人その他の親族がおらず,又はいたとしても疎遠である場合には,自己の死後の事務処理を,自身が望む形で確実に実現することは困難です。

そこで,自己の死後に関する事務を,生前に第三者に委任してこれを実現するために締結することになります。

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By 行政書士ほそだ宮の森事務所

 行政書士 細田 健一

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