ほそだ宮の森事務所通信7月号 超高齢社会に関するニュース,生前対策・終活,相続・遺言,家族信託を解説
===RELEASER.===
July 2023
いつもお世話になっております。
行政書士ほそだ宮の森事務所 一般社団法人いきいきライフ協会札幌宮の森代表の細田健一です。
超高齢社会に関するニュース,生前対策・終活,相続・遺言,家族信託などについて,法律面ばかりでなく身近な話題を取り上げてやさしく解説いたします。
お仕事や家事の合間にお読みいただいて,ご家族,お友達,そしてご自身のために,「失敗しない生前対策」や「失敗しない相続」を考えていきましょう。
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早いもので今年も半分の6カ月が過ぎました。いかがお過しでしょうか! 先日,札幌では気温が31度を超え,今年初の真夏日を観測しましたね。いよいよ夏本番!
札幌では大通ビアガーデンの季節がやってまいりました! 道内各地でも趣向を凝らしたビアガーデンがオープンするのではないでしょうか?みなさまのお住まいの地域ではいかがでしょうか。
ほそだ宮の森事務所通信2023年7月号をお届けいたします。
=7月号目次=
◇気になる話題 虫の目,鳥の目,魚の目 「認知症基本法」について
◇介護予防の取り組みを支援する! ~「介護予防センター」の役割~
◇法令の窓 ~相続に関係した様々な「期限」に注意しましょう!~
◇事例のご紹介 ~兄弟姉妹の遺産相続トラブル~
◇「認知症サポーター」の視点から ~認知症不明者の急増!~
◇あとがき
《気になる話題 虫の目,鳥の目,魚の目》
私たちは日々、さまざまな視点で世界を見つめています。
同じものを見ていても、自分と他人では意見や感覚が違うって面白いことですよね。
この記事では、虫の目、鳥の目、魚の目という3つの視点を大切に最近の超高齢社会にかかわりの深いニュースや話題について分析していきます。
因みに「鳥の目,虫の目,魚の目」とはどのような視点を比喩しているのでしょうか。「虫の目」は、複眼です。つまり「近づいて」さまざまな角度から物事を見るということです。 「鳥の目」とは、高い位置から「俯轍的に全体を見回して」見るということです。「魚の目」とは、潮の流れや干潮満潮という「流れ」を見失うなという意味ですね。
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今回は,去る6月14日に可決成立した「認知症基本法」について,その中身はなにか,わたしたちの生活にどのような影響があるのか調べてみましたのでご報告いたします。
1.「認知症基本法」のポイント
この法律は,一度2019年に自民党を公明党により法案が提出されていましたが,反発の声もあがり成立しませんでした。今回成立した法律の概要をみていきます。
はじめに「目的」は,急速な高齢化の進展に伴い認知症の人が増加している現状を踏まえ,認知症の予防等を推進しながら,認知症の人が尊厳を保持しつつ社会の一員として尊重される社会(=共生社会)の実現を図ることとされています。
そして国としての理念を示したうえで,「国民の理解の推進」「バリアフリー化の推進」「認知症の予防」などを基本的施策に定めました。
基本法というのは,あくまで「土台」「基盤」であって,この法律ができたことによって,国や自治体は今後,どのような取り組みを行っていくかの計画の策定が求められています。逆にいうと,私たちの暮らしが,この法律ができたことですぐに何かが変わるというわけではありません。
大きな意義は,今後,政府がこの法律に示した理念・考え方に基づいて政策決定をするよう定めていることなのです。
2.認知症との「共生」への理解
私たちの社会にはまだまだ,認知症であることが「良くない事」「恥ずべき事」であるような偏見が存在します。しかし,認知症は,誰もが一定の年齢になれば患う脳の病気です。
そこから考えていくと,まず優先すべきは,私たちの社会の中で,認知症の人を含めて「誰もがそれぞれの人格や個性を尊重して,支え合いながら生きていく社会(共生社会)」への理解を拡げることです。
「共生社会の実現」のために私たちがすべきことは,なんでしょうか。
それは,はじめに「認知症」を予防することではなく,「認知症に関する正しい知識及び認知症に関する正しい理解を深める」ことだという方向になります。
もう一つ大事な点は,法律において「認知症施策推進本部を設置し,基本計画の案の作成・実施の推進等をつかさどる」とされているのが,その策定過程に「認知症の人及び家族等により構成される関係者会議を設置し意見を聴く」としている点です。
認知症の本人や家族の抱える課題は,当人にしか分かりえないことが多くあります。例えば,「認知症の人にとって日常生活又は社会生活を営む上で障壁となるものを除去」しようとしたときに,何が障壁かは,当人に聞いてみなければ分かりません。そのため,政策決定の場にはその政策領域の当事者と共に課題を考え,政策を創り上げていくことが大変重要になるわけです。
これから国の基本計画が策定されます。地方自治体での基本計画策定は努力義務ですが,多くの自治体で策定が進んでいくと思われますので,行政の動きを注視していきましょう。
〈介護予防の取り組みを支援する! ~「介護予防センタ-」の役割~〉
多くの元気な高齢者の方がお世話になっている「介護予防センター」。わたくしも,講師の依頼を承っております。
改めて,その役割について,簡単にまとめてみました。
介護予防センターは介護予防の拠点として、また、地域の高齢者の身近な相談窓口の機能を担い、地域包括支援センターの役割を補完する機関として、設置された機関です。高齢者の方々が住み慣れた地域でいつまでも暮らせるように、介護予防教室の開催や地域の介護予防活動の支援を行っています。
札幌市の介護予防のキャッチフレーズは「めざそう!いきいきスマイルシニア」です。重点テーマとして,以下の6つを上げています。
①運動器の機能向上 ②栄養改善 ③口腔機能向上 ④閉じこもり予防 ⑤認知症予防 ⑥うつ予防
◆介護予防等の相談窓口◆
介護予防に関することや地域で閉じこもりがちな高齢者などの相談をお受けします。また、介護や福祉など、さまざまな制度や地域のサービスについての相談もお受けしています。
◆すこやか倶楽部(札幌市)の開催◆
日ごろ外出する機会が少ない概ね65歳以上の方を対象に、地域の身近な会館などで『転倒予防』『認知症予防』『口腔機能』『低栄養』『閉じこもり予防』『疾病予防』などをテーマに、楽しみながら介護予防に取り組むきっかけづくりの教室を開催しています。
◆地域の介護予防活動の支援◆
町内会、サロン、老人クラブなどの研修会や会議などで介護予防に関する講話を行っています。また、自主運動グループなどの自主的な介護予防活動への支援や運営についての助言など、地域で行う介護予防に関する活動を支援しています。
(札幌市介護予防センター イメージキャラクター「かよるん」↓)
〈法令の窓 ~相続に関係した様々な「期限」に注意しましょう!~〉
あまり想像したくないことですが,身近な人が他界されたら,悲しみに暮れる間もなく,様々な「期限」に気を配る必要が出てきます。
役所などへの連絡や手続き,実家の片づけなどでついつい忘れがちになるのが相続に係るルール。最低3つの期限を頭に入れる必要があります!ペナルティーがあるため,知らなかったでは済まされません!
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最も早く来るのが「10カ月」という相続税の申告と納付期限です。相続税がかからない人には関係ないですが,2015年に免税のハードルが下がったため,対象となる人は増えています。相続人間で争いが起こるなど,間に合わせるのは意外に難しい。
遺産分割の話し合いがまとまらないといった事情で期限は延長されません。ルールを守らなければ延滞税,加算税が掛かる場合もあります。
24年4月から登場するのが,「3年以内」という相続登記の期限です。現在は実家などの不動産を相続しても「登記はいつまでに」と決められていません。ルールの改正後は3年以内のに登記が義務となり,正当な理由がないのに登記しないと10万円以下の過料の対象となります。
23年4月に始まったのが,「10年以内」という遺産分割協議に関する期限です。遺産分割協議は遺言が無い場合などに相続人が「遺産をどう分けるか」を話し合うことですね。新ルールは厳密に協議自体の期限ではなく「10年を過ぎると原則,法定相続分で遺産分割することになるということです。
税から登記までの各期限は数え始める起点も微妙に違います。ご自身の事情に照らして,早めに準備しましょう。
不安のある方は,是非,ほそだ事務所にお気軽にお問い合わせください。初回の相談は無料です!
〈事例のご紹介 ~兄弟姉妹の遺産相続トラブル~〉
兄弟姉妹の遺産相続トラブルで起きやすい事例を紹介します。
仲の良い兄弟姉妹であっても,相続の時は別人に変わり争いに発展してしまうケースが少なくないのです。
典型的な事例を4つ取り上げていきます。
当てはまりそうなケースがあれば,トラブルになる前に専門家に相談して,今からできる対策を打つことをお勧めします。
1.親の世話をした兄弟姉妹がいるケース
例えば,あなたが就職して以来ずっと東京暮らしで,その間,あなたの姉と妹が両親の世話をずっとしてきたとしましょう。そして,ご両親が亡くなった時,あなたが今までご両親の世話をしてこなかったことを理由に,相続をする権利がないと言われたらどうでしょうか?
「寄与分」という制度があります。被相続人の療養や看護,その他被相続人の財産の維持又は増加について特別に寄与をした者に認められ,通常の相続割合に対してプラスして評価されることになります。
しかし,相続人の相続分を奪うことはできません。寄与分の具体的な割合を決める方法は,原則として相続人同士の話し合いであり,ある相続人から一方的に決定されるものではありません。
お世話をした兄弟姉妹の立場を尊重しながら交渉することが求められます。万が一,争いになれば弁護士に相談するのがいいでしょう。
2.連絡が取れない兄弟姉妹がいるケース
家を出ていってしまって,長らく連絡を取っていない兄弟姉妹がいる,あるいは会ったことのない兄弟姉妹がいる場合には,相続手続きをするときに少々苦労します。
「遺産分割協議」は,相続人全員で行わなければいけないことから,連絡の取れた相続人だけで遺産分割協議をして,後から連絡の取れなかった相続人に「それはおかしい!」と言われると,もう一度やり直さなければいけなくなります。
このようなケースにななないよう,相続人調査の手続きをかける必要があるのですが,素人ではなかなかうまく確認することができないことも多くあり注意が必要です。
相続人を確定できなければ,スムーズに遺産分割協議を進めることが困難になってしまいますので,専門家を活用することも検討しましょう。
3.遺言書の相続分割に兄弟姉妹で偏りがあるケース
遺言書にしたがって遺産分割を行うとき,仮に兄弟間で遺産の相続分に偏りがある場合,あまりにも相続分が少なくならないようにする制度があります。
これを「遺留分侵害額請求」といいます。
遺言書による遺産分割を行う際に,遺留分を満たしているかどうか確認しましょう。遺留分侵害額請求が認められると,他の相続人から金銭による支払いを受けることができますので,不公平感をいくらか解消できるでしょう。
4.不動産など分割し難い財産があるケース
不動産が相続財産に含まれている場合,その不動産は簡単に分割することができません。
一方で,不動産の評価額は他の財産より高額となる場合が多いため,不動産を相続すると他の財産を相続できなくなることも少なくなりません。
不動産が相続財産に含まれている場合に,スムーズに遺産分割を行うには,遺言書を作成しておいてもらうのが一番良い方法です。
ただ,亡くなってしまった後では遺言書は作成できないため,代償分割を行って不動産を相続した人がお金を支払う,あるいは分筆して土地を2つに分けるなどの方法も検討しておきましょう。
〈「認知症サポーター」の視点から ~認知症不明者の急増!~〉
6月22日,警察庁が認知症不明者の統計を発表した。認知症やその疑いがあり,行方不明となった人が,統計を取り始めた2012年から増え続け,10年間でほぼ倍増し,2022年に18,709人に達しました。
都道府県別では,兵庫が最多の2115人で,大阪1996人,埼玉1902人が続いた。
北海道は前年比73人増の510人で過去最多となりました。徘徊中に事故に遭うなどして死亡するケースもあり,22年は19人の死亡が確認されました。
厚生労働省の推計によると,国内の認知症患者は2020年に600万人。政府は,19年の認知症施策推進大綱で発症や進行を遅らせる「予防」と,当事者が暮らしやすい社会を目指す「共生」を柱に据えました。
警察や自治体,地域が連携した見守り体制の構築のほか,<