定年退職後やフリーランスの「健康保険」はどうすればいいの?

1.定年退職後やフリーランスになったあとの健康保険

前回も触れましたが「国民皆保険制度」となっている日本では、すべての国民が何らかの公的医療保険に加入することが義務付けられています。

会社員は勤務先を通じて、被用者保険に加入しています。

会社員の健康保険は、中小企業の従業員を対象とした全国組織である「全国健康保険協会(協会けんぽ)」と、大企業または同業種の企業が集まって独自に運営する「組合管掌健康保険(組合健保)」のいずれかで、入社すると勤務先が加入のための手続きをしてくれます。

保険証を持っていると全国どこの医療機関を受診しても、かかった医療費の一部を自己負担するだけで必要な医療を受けられますね。

会社を定年や自己都合で退職した場合、健康保険も資格喪失手続きがとられます。退職日の翌日から保険証は使えなくなってしまいます。

健康保険証がないと、クリニックや病院での治療費や薬代が全額自己負担になってしまいます。これは困りますね。

そこで、退職と同時に、健康保険の切り替えをしなければなりませんが、どのような選択が可能なのでしょうか。

ここでは主に3つの方法を確認していきます。

一つは退職した会社の健康保険の任意継続被保険者になる、二つめは国保に加入する、三つめは会社員の家族の健康保険の被扶養者になる、です。

このほかに特例健康保険組合の特例退職被保険者になるというのもありますが、これは大企業などのごく限られた健保組合であり全国で61組合(2014年現在)しかないので割愛します。

2.退職した会社の健康保険の任意継続被保険者になる

これは退職したり、解雇されたりした会社員が、それまでの会社の健康保険に引き続き加入できる制度で、2年間は継続できます。

勤続期間が退職日までに2ヵ月以上あることが条件で最長2年間継続できます。加入を希望する場合は、退職から20日以内にもとの会社に申し出て手続きします。退職前から考えておいたほうがいいですね。

在職中は、本来の保険料額の半分を会社が負担してくれていましたが、事業主負担はなくなり、退職後は全額本人が負担することになります。保険料が2倍になるのは大きい負担増です。

したがって、国保とどちらが得かは一概には言えないようです。一般には退職前の給与が高い人は、任意継続被保険者を選んだほうがお得になることが多いと言われています。

上限額が決まっており、退職時の平均月収(標準月額報酬)、または加入者すべての給与の平均(協会けんぽは30万円)のいずれか低い額に保険料率をかけた金額です。際限なく保険料が高くなるわけではありませんので、その点は少し安心です。

被用者保険ですので、扶養家族がいる場合は従前と同様に、保険料の負担なしで一緒に加入できるのもメリットです。

3.国保に加入する

国保の保険料については前回の記事でふれましたので興味のある方は以下のリンクをご覧下さい。

国保の保険料は、住所地の自治体によって大きく異なり、財政の不安定な自治体は保険料が割高になります。また、前年の所得に応じて保険料が決まる所得割がありますので、定年退職後間際は前年の所得が高いので、保険料も高くなります。

また、会社員の健康保険は、扶養家族の保険料を支払う必要がありませんが、国保は家族の人数に応じた均等割があるため、家族の収入がなくても、その分の保険料は負担する必要があります。

保険料をできるだけ抑えたいので、さきほどの任意継続被保険者制度と比較してから加入先を選ぶようにしたいですが、保険料が高いからといって手続きしないとのちのち大変なことになります。

国保に加入する場合は、その他の保険の資格喪失から14日以内に手続きする必要があります。無保険にならないように、扶養家族の分、特に配偶者分も含めて忘れずに加入手続きをします。

4.家族の健康保険の被扶養者になる

配偶者や子どもの健康保険の被扶養者になれば保険料は必要ありません。

被保険者が子どもの場合に、子どもに生計を維持してもらっていることが証明できれば親が子どもの健康保険に加入することは可能です。

ただし、年収などの条件が厳しいためかなりの難関です。

被扶養者になれるのは、健保組合ごとに要件は異なるが、協会けんぽの場合は60歳以上の人の場合は年収180万円未満で、その金額が子どもからもらっている仕送りよりも少ないことが条件になっています。

つまり、年金収入など自分の収入以上に、子どもから仕送りを受けていなければ利用できません。該当するのはごく一握りの人で、多くのケースがその他の制度に加入することになります。

5.まとめ

今回は、定年退職後やフリーランスになったときに、健康保険をどのように選んだらよいのかをみてみました。

主に3つの方法を確認しました。一つは退職した会社の健康保険の任意継続被保険者になる、二つめは国保に加入する、三つめは会社員の家族の健康保険の被扶養者になる、です。

現実的には、2年間の任意継続被保険者制度の活用とその後に国保加入になりそうです。

任意継続被保険者制度は、勤続期間が退職日までに2ヵ月以上あることが条件で最長2年間継続できます。加入を希望する場合は、退職から20日以内にもとの会社に申し出て手続きします。退職前から考えておいたほうがいいですね。