「定年退職でも失業給付が受け取れますか?」という前に雇用保険とは?
1.失業給付とはどのような制度なの?
雇用保険とは、離職したときに給付金を受け取れる制度であることをほとんどの方がご存じだと思います。
「失業保険」「失業給付」とも呼ばれますが、正式には「基本手当」といいます。
再就職するまでの生活をサポートするもので、保険料は事業主と労働者で負担します。
賃金に対しての雇用保険料率は事業の種類によって違いがあり、定期的な見直しが実施されます。
【一般の事業】
労働者負担:3/1000
事業主負担:6/1000
【農林水産・清酒製造の事業】
労働者負担:4/1000
事業主負担:7/1000
【建設の事業】
労働者負担:4/1000
事業主負担:8/1000
対象者の条件は、雇用保険の適用事業所で雇用され、31日以上、且つ週20時間以上雇用される場合、労働者の雇用保険加入が義務付けられています。アルバイト、パートタイムでも名称に関わらず雇用保険の対象となります。
さて、失業といっても「自己都合退職」、解雇や倒産などによる「会社都合退職」など事情が異なりますね。
結論からいって、定年退職も失業に含まれています。つまり、失業給付の基本手当をもらうことができるのです。
ただし、条件が合致していなければなりませんので、次にみていきます。
2.定年退職後の給付の条件
条件は大きく3つあり、すべて満たす必要があります。
その1つ目。離職の日以前2年間に12カ月以上雇用保険に加入していること。ただし、解雇や倒産など会社都合で退職した場合は、離職の日以前1年間に雇用保険加入期間が6カ月あればいいです。
2つ目。失業後も働く意欲や就職できる能力があり、「求職活動」を行っていることです。
求職活動とは、これもよく聞くことと思いますが、ハローワークで求職の申し込みを行い、求職の活動を行っていることをいいます。ハローワークでは、「求職申込み」を行います。再就職の意思表示を示すものです。「雇用保険説明会」の日時が案内されます。
3つ目。定年退職の年齢が65歳未満であること。雇用保険の加入や給付は65歳を境に、65歳未満の人と別の取り扱いがおこなわれます。
定年退職される方には、わたしのようにこれまで40年近く一つの会社で働き続けて、失業とは縁のなかった人もいると思います。具体的な内容を知らないという人もいると思います。
定年退職の場合、基本手当は、ハローワークで求職申込みをした日から通算して7日間の待機期間を経て、支給が開始されます。
所定給付日数は、自己都合退職および定年退職の場合、被保険者期間が20年以上であれば、150日分になります。
また、日額は、「賃金日額×所定の給付率」で算定されます。次回以降、詳細を述べたいと思います。
3.ほかにもある雇用保険の給付制度、スキルアップや賃金補填にも!
雇用保険には失業給付のほかにも、各種の給付金制度が用意されています。
「教育訓練給付制度」という、キャリアアップを目指すのにとても便利な制度もその一つです。
この制度は、対象となる人は雇用保険の被保険者で、支給要件期間が3年以上ある人など細かく区分されています。
一般教育訓練は、専門学校の授業料の20%相当額が戻ってきます(支払い上限額は10万円)。
特定一般教育訓練は、支払った授業料の40%相当額が戻ってきます(支払い上限額は10万円)。
資格の種類は、プログラミング、Webクリエイター、TOEIC、行政書士など多彩な講座があります。
専門実践教育訓練は、より専門的な資格所有で1年以上3年以内の養成機関が対象です。資格は、調理師、栄養士、保育士、看護師、理学療法士、美容師などさまざまです。費用の50%が支給されます(限度額は120万円)。
また、以前にも触れた「高年齢雇用継続給付金」や「高年齢再就職給付金」
も雇用保険の給付制度でしたね。しかし、残念ながら両給付金制度とも2025年から段階的な廃止が決まっています。
家族の介護に使えるのが「介護休業給付」。さらに、育児休暇期間中の「育児休暇給付金」も雇用保険から出るものです。
4.まとめ
今回は、雇用保険の基本的なことを見てみました。
会社を定年退職した後、次の勤務先を考えている場合、雇用保険がたいへん役立ちます。
定年退職も失業に含まれていますので、失業給付の基本手当をもらうことができます。
条件は大きく3つあり、すべて満たす必要があります。定年退職の年齢も65歳未満でなければなりません。
雇用保険には失業給付のほかにも、各種の給付金制度が用意されています。「教育訓練給付制度」という、キャリアアップを目指すのに便利な制度もその一つです。