親が亡くなったときの相続手続きの流れはどうなりますか?
・親の亡くなった後の手続きのなかでは、相続が一番大変になります。
・相続はお金や財産に関わることなので、身内でのトラブルの原因にもなりがちです。
・さらに、相続の放棄や相続税の申告と納税は、手続きの期限が決められているものもあります。
・また、生前に準備できることが多いのも相続です。事前に何をすべきかを確認し、生前に親や親族の間で相談し、準備を進めることができます。
・50代、60代そして定年前後の方々は、高齢の親御さんの相続があった時に慌てないよう、相続の流れとスケジュールを覚えていきましょう。
・相続の手続きのうえで、財産を残して亡くなった故人を「被相続人」、財産を相続する人を「相続人」といいます。
目次
- 1.相続の開始日
- 2.遺言書の調査
- 3.相続人の調査
- 4.相続財産の調査
- 5.相続放棄の判断(3カ月以内)
- 6.準確定申告(4カ月以内)
- 7.遺産分割協議・遺産分割協議書の作成
- 8.相続税の申告と納税(10カ月以内)
- 9.相続預貯金の解約・不動産の名義変更ほか
- 10.まとめ
1.相続の開始日
・全ての相続手続きの基準となる開始日は、被相続人の死亡日です。手続きの期限や、相続税の基準となる日もこの日です。
・相続手続きは四十九日の法要が終わってからと考える方も少なくはありませんが、相続手続きには予想外に時間がかかってしまうことがあります。
・遺言があるかないか、予想外の相続人がいないか、相続人の知らない財産はないのか、といった確認には時間がかかりますので、早めにスタートします。
2.遺言書の調査
・相続手続きの方向性を決める上で、遺言書の有無は大きなポイントになってきますので、遺言書を残していないか調べます。
・遺言書を残していると、原則としてその内容が最優先されます。遺言書では、財産の分け方を指定したり、相続人以外の人に財産を贈ること(「遺贈」という)ができます。
・自筆証書遺言であれば自宅の重要書類などを保管している場所、金庫などを探します。
・公正証書遺言であれば、全国の公証役場での遺言検索をすることが可能です。
・自筆証書遺言を発見した場合、家庭裁判所において「検認」という手続きをする必要があります。封がしてある場合、「検認」の手続きの前に遺言書を開封することは法律で禁止されていますまた、後々のトタブルの種になりますので、開封せずに裁判所に提出しましょう。
3.相続人の調査
・正確な法定相続人の範囲を確定する調査です。配偶者、子ども、親、兄弟の有無によって誰が相続人になるのか、人数は何人なのかが決まります。
・具体的には、被相続人の出生時から死亡時までのすべての戸籍謄本を取り寄せて確認していきます。
・例えば、前妻との間に子供がいたり、知らない人を認知や養子にしていたりと様々な可能性があります。
・知らない法定相続人が、もし見つかったときは、今後の相続手続きに加わってもらわなければなりませんので、早めに確定するようにします。
4.相続財産の調査
・被相続人がどれだけの財産を持っていたかがわからないと遺産分割の判断ができません。
・もし遺言書があったとしても、遺言書に書かれていない財産については別途、相続人間で話し合いをしないといけないので、結局、相続財産はしっかりと調査をする必要があります。
・一口に「相続財産」と言っても、その調査対象は沢山種類があります。
・代表的な相続財産としては、金融機関に預けている預貯金や、土地建物といった不動産。忘れてはいけないのは、借金などのいわゆる「マイナスの財産」です。
・相続財産調査の結果、プラスの財産よりマイナスの財産の方が多いときは、相続放棄をすることも選択肢に入ってきますので、遺産分割協議に入る前には、必ずマイナスの財産についても調査を行ってからにします。
・相続放棄は、原則として相続があったことを知った日から3カ月以内にしなければなりませんので、早期に遺産調査を行うようにします。
・また、相続税の申告にも必要になりますので、とても重要です。
5.相続放棄の判断(3カ月以内)
・先ほども触れたように、遺産がマイナスになることがわかったため、相続を望まない相続人は、家庭裁判所うで相続放棄の手続きをしなければなりません。
・この手続きの期限は、原則として相続があったことを知った日から3カ月以内です。
・それまでに、ここまでの準備を行わなければなりません。
6.準確定申告(4カ月以内)
・被相続人に一定の所得があった場合に、相続人が代わって所得税の申告(納税)をすることを「準確定申告」といいます。
・相続の開始があったことを知った日の翌日から4カ月以内に、死亡当時の納税地の税務署に提出しなければなりません。
・相続人が二人以上いる場合は、全員の連署で提出します。
・被相続人が不動産の家賃収入を得ていたり、不動産を売却しる場合には注意が必要です。ただし、公的年金などの収入が400万円以下で、他の所得が20万円以下の場合は申告が不要となります。
7.遺産分割協議・遺産分割協議書の作成
・いままでの調査などが準備段階です。
・準備ができたら、誰がどのくらいの割合で相続するのかを相続人全員で話し合います。遺言書がある場合はそれに応じて分割を行うのが基本です。
・仲が良い親族間での遺産分割では特に問題がありませんが、そうでない場合には、十分に注意して、自分の意見だけをぶつけるだけではなく相手の話しも聞いて、お互いが納得できるように話し合うことが大切です。
・全員が協議に納得して分割したことの証として、「遺産分割協議書」を作成しなければなりません。
・もし、相続人間で話がまとまらない場合には、家庭裁判所の調停を利用する方法もあります。
8.相続税の申告と納税(10カ月以内)
・遺産総額が相続税の基礎控除額を超える場合や、相続税の特例等を利用しようとする場合に、相続税の申告と納税が必要となります。
・申告期間は、被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10カ月以内にしなければなりません。申告、納付期限の延長も可能ですが、特段の理由が必要です。
・それまでに、遺言の検認や、遺産分割協議書(財産目録も添付されている)も揃っている状態に整理しておきます。
・遺産総額が相続税の基礎控除額を超えないような場合は特に手続きをする必要はありません。相続財産が分かったら、ザっと概算してみて相続税が掛かるのか掛からないかシミュレーションしておきましょう。
9.相続預貯金の解約・不動産の名義変更ほか
・遺言書や遺産分割協議書の内容にしたがって預貯金の解約手続きや払い戻し手続き、不動産の名義変更(相続登記)をしていくことになります。
・預貯金の解約手続きはそれぞれの金融機関に対して行います。
・不動産の名義変更については、相続登記を行います。相続登記は、これまで義務ではありませんでしたが、法改正があり、令和6年4月1日から3年以内に相続登記するよう義務化されますので注意したいです。
10.まとめ
・相続の手続きをまとめると、相続税申告の10カ月を完了の目安に、そこから逆算していきつつ、3カ月の相続放棄や準確定申告の期限がある手続きを優先的にクリアしていくイメージがいいと思います。
・それでも、各種の調査は3カ月より前にはひと段落しておくようにしなければなりません。
・相続の手続きは、調査関係や最後の解約・変更手続きなどほぼ同時進行で進めていきます。
・無理だと思ったら、専門家に相談しながら進める方法もありますので、一人だけで抱えず周囲に相談しながら進めましょう。