定年後のマネープランは年金以外の収入をいかにして得るかで決まる!
こんにちは!定年後の3大不安は、「健康」「孤独」「お金」といわれていますが、最も多くの人が切実に考えているのが「お金」、すなわち「マネープラン」でしょう。今回は定年後のマネープランについてみていきます。
1.定年後のマネープランとは
定年後のマネープランとは、定年後から生きている間の生活費に関する収支計画と、資産の状況をいいます。
前回、みてきたように、一般的な会社員は50代後半から65歳後の年金受給までに収入ダウンが3度起きます。支出が大きければ、それまで作ってきた預貯金などの金融資産を切り崩して生活費に当てることになります。
切り崩す金融資産がなくなれば、家計が破綻します。老齢の夫婦が路頭に迷うことになってしまいます。
この資産を上手に残しつつ、老後をいかに過ごしていくかが、重要になってきます。
2.「老後資金2000万円不足問題」の問題!
2年前の2019年に金融庁の報告書がきっかけになって、「老後資金2000万円不足問題」が世間を騒がせました。記憶に新しいところだと思います。正にマネープランそのものが大きな話題になりましたね。
この数字の根拠をみると高齢夫婦(夫65歳以上、妻60歳以上の夫婦のみの無職世帯)が公的年金の収入が月額にして21万円(実収入額)だけでは、生活費に▲毎月約5.45万円の不足が生じるから、不足額は1年間で約65万円、30年間で約2000万円不足するというものでした。
「定年楽園」などの著書もある経済コラムニストの大江英樹氏は、もともと「2000万円問題」は存在しないという立場で,各方面で発言していらっしゃいます。
現在では「2020年の最新データによると,老後30年間で不足する金額はたった55万円となりました」と述べています。これには特殊事情(特別給付金で収入増,外出が減って支出減)の影響があります。また,毎月の収支だけをみると5.45万円の不足が生じますが,一方では貯蓄が約2500万円あり,結局は,その貯蓄をを少しずつ取り崩しながら不足を埋めていくことになります。30年間でみると,2500万円-2000万円=500万円の余りが出る計算になります。「2000万円問題は存在しなかった」という,大江さんの主張も納得できます。
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貯蓄に代表される金融資産を無視してのマネープランは,大きな欠陥ありですね。
また,例えば,月5万円の収入であっても入り続けることになれば,貯蓄がなくても2000万円問題はほぼ解消してしまいます。
3.定年後の生活費はほんとはどのくらい必要か
では実際に,定年後の生活費はどのくらい必要なのでしょうか。生命保険文化センターの試算によると,平均で必要になる生活費は月額約22万円。これが最低限なので,ゆとりある生活を送りたい場合は月額約36万円が必要となります。
<生命保険文化センター「生活保障に関する調査」/令和元年度>
老後の最低日常生活費:221,000円
ゆとりある老後の生活費:361,000円
平成31年度厚生年金(夫婦2人分の老齢基礎年金を含む標準的な年金額):221,227円
年金だけの収入の場合,収支はちょうど,「ゆとりある老後生活」を送る場合は月に14万円の赤字となり,年間で170万円近い赤字となります。
また,生活費以外にも,子供の結婚資金の援助,親の介護費用,住宅の改修,車の買い替え,夫婦どちらかが病気になったり,介護が必要になる可能性もあります。予定外の出費にも備えておきたいところです。
4.何が最も重要なポイントか
定年後のマネープラン,ライフプランで最も重要な点を一つだけあげるとすると,年金以外の収入が何歳まで入ってくるのか,言い換えれば,長く働くことに尽きるのではないかと思います。
先の大江氏も,「Work longer」つまり「出来るだけ長く働く」ことが最も重要だと言っています。
“働く”ということは資産運用とは違って,確実に所得を得る手段である。…“2000万円問題”が話題になり,資産運用で2000万円を作ろうという金融業者や不動産業者の広告などを目にするが,働くことで確実にそれを得ることができるのだから,結果が当てにならない運用よりもこちらの方がよほど良い。
また,「定年ひとり起業」などの著者の大杉潤氏も,本のなかで,老後マネープランの重要なポイントは3点に集約されるとして,「何歳まで働くか」を最重要視しています。
1.何歳まで働くか
2.何歳まで年金を受け取るのか
3.どんなライフスタイルを送るのか
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つまりは,「働けるうちは働き続ける」ということです。フルタイムでなくてもいいのです。アルバイトであっても,年間100万円稼ぐことは可能です。生活の見直しをすれば,収支を赤字どころか黒字にすることも可能です。
どのような働き方を目指すかは,繰り返し言っているとおり,あなたが自分の人生哲学と向き合い,ほんとにやりたい人生後半の「生き方」を見つけることに繋がります。「自己決定感」を大切にしましょう。
5.うまくいく人のマネープラン・老後資金戦略は
家計のキャッシュフロー表を実際に作成して,90歳くらいまでの夫婦の毎年の収支をエクセルで作成してみます。フォーマットはネットで無料のものが出回っていますので「ライフプラン」「マネープラン」で検索してみてください。
収入には,給与収入と公的年金収入を記載。その他の収入として,企業年金,副業などを計上します。
一方の支出には,生活費,保険料,その他支出,一時的支出などを記載します。
そして,差額が年間収支となり,プラスになれば黒字で「金融資産残高」が増加し預貯金ができます。マイナスになれば赤字で「金融資産残高」が減少し預貯金を取り崩すことになります。
こうして年間収支を計算し90歳くらいまでシミュレーションしたら,人生のマネープランの「見える化」ができました。
大切なのは,「金融資産残高」(預貯金)の推移です。この額が底をつかないように,家計をコントロールすることが重要です。
簡単に例を示します。実際は,毎年分を試算しますが,ここでは特徴的な3年分を取り上げてみます。
〇2025年夫60歳,定年再雇用後(給与収入がダウン)
収入計516万円-支出計545万円=収支▲29万円:金融資産1970万円
〇2030年夫65歳,公的年金受給+給与収入
収入計400万円-支出計391万円=収支+9万円:金融資産2000万円
〇2045年夫80歳,公的年金のみ収入
収入計300万円-支出計336万円=収支▲36万円:金融資産680万円
先にも登場した経済コラムニストの大江氏は,次のように「お金の使途と出所の三分法」を提唱しています。定年後に縮こまらずに活き活きと生きる知恵として,とても参考になりますね。
①日常生活費⇒公的年金,企業年金:確定した金額で終身給付
②自己実現費・一時的出費⇒働いて得る収入:楽しむために働く
③医療・介護施設入居費⇒退職金,金融資産:不確実な支出は確実な手元資金で
マネープランを見える化した結果,将来金融資産が尽きる(家計が破綻する)可能性がある場合は,家計を見直す必要があります。
その方法の一つめは,収入を増やすことです。夫婦それぞれ,再雇用や再就職,リスクの少ない働き方で,緩やかでも働く期間を伸ばすことです。二つめは,支出を減らすことです。住宅ローンの繰り上げ返済,保険の見直し,ライフイベントの予算縮小など家計のスリム化を多いに図りましょう。三つめは,運用利回りを上げることです。普通預金から少しでも利息が高い定期に移し換えるなどです。
定年後のマネープランは,家族全員に,特に配偶者にとってもとても重要なものになります。自分で考えるだけでなく,家族とともに生活プランを具体化していくのがよいと思います。これから何が起きるのかを家族みんなで予測し,リスクヘッジを行うことができます。
住宅ローンの繰り上げ返済(我が家は,返済せずに残しています)をしたり,定年後も収入を稼げるように自身のキャリアアップを図ったり,職場以外の人との交流を広めたり,資産運用を始めたりすることも可能です。
6.まとめ
今回は,定年後の「マネー」「お金」について,深掘りしてみました。是非,90歳くらいまでマネープランをシミュレーションして見える化してみてください。公的年金以外の収入をいかに稼ぐかをイメージしてみましょう。そうして,ご家族で意見交換してください。