定年後の「起業」にとって大切なことは?
1.定年後の起業の失敗の要因は
調べていくと定年後の起業で失敗するのは、次のようなケースが多いのが分かります。
一つ目は、全くの未経験の分野での起業のケースです。全く経験もノウハウもない分野の業種に飛び込むのはリスクが高く、見通しが立てにくくなります。また、体力的にも無理が効かない年齢になっています。どうしてもやりたい場合は、自宅開業など元手を極力抑えて、趣味くらいの気持ちで入るのがよいのでは。
二つ目は、初期投資にお金を掛けすぎるケースです。ほぼ初期投資なしで始められるコンサルティング業や、実店舗を構えないネットショップでは起こり難い問題ですが、実店舗を用意する必要のある飲食店などの起業で起こり得ます。
退職金や預貯金を無計画につぎ込んでしまったり、融資で多額の借金を背負ったりするケースです。定年後の起業の大事なルールは、生活基盤を確保することです。起業資金と生活資金を分けて考えて、スモールスタートを基本にしましょう。元手を使い切ったら潔く撤退することを起業の条件にしておくことも大切。
三つ目は、家族の理解がないまま起業するケースです。妻を含めて家族に起業を問いつめられ阻止されることがあります。「どのようにして生計を立てるのか」「どう資金繰りするのか」を問い詰められて諦めてしまう場合や、退職金や生活費に一切手を付けないでの起業という条件を突きつけられる場合もあります。
家族には、普段から将来についての考えを話し合っておくことが大切です。(わたしも,随分と時間を掛けました。(笑))そして、真剣さを説明できるように、事業計画、資金繰り表、副業での実績作りを進めておくのがよいと思います。
2.落とし穴に注意!
中小企業診断士の大場保男氏がその著書『50代・60代のためのライフワーク起業のすすめ』(セルバ出版)において、豊富な起業相談の経験から、シニアの起業には5つの落とし穴があると指摘しています。
シニアの起業5つの落とし穴
・第1の穴:長年の会社員としての意識と感覚
・第2の穴:資金に対する甘い見込み
・第3の穴:今までの自分の仕事に対する過信
・第4の穴:“売ること”への心理的な抵抗感
・第5の穴:自分の体力に対する過信
第1の穴:長年の会社員としての意識や感覚。今まで会社員時代は当たり前だと思っていたことが、会社を離れると当たり前ではないことがありますね。同じ会社に長くいて染まってしまった考え方や価値観、これが世間とズレテいることがしばしばあります。これを防ぐためには、日頃から違う会社や違う業種の人たちと付き合うこと、起業準備段階から起業を目指している人たちと付き合うことが大切になります。
第2の穴:資金に対する甘い見込み。これは前回,初期投資のところで触れましたので割愛します。経費を抑えることは、元の会社にいたときよりも重大なミッションですね。
第3の穴:今までの自分の仕事に対する過信。長い間、同じ会社で仕事をしていると、自分の仕事のやり方に固執してしまいがちですね。しかし、小規模な事業ほど柔軟性や臨機応変な対応が必要です。現役時代のスキルやノウハウが通用しない場合もあります。とくにIT技術、ネットマーケテイングは日進月歩です。
第4の穴:“売ること”への心理的な抵抗感。営業畑の仕事をやっていた人なら別ですが、総務や経理、製造などの仕事をやってきた人にとって、“売ること”自体に心理的な抵抗感がある人が多いようです。これをメンタルブロックという専門家もいます。しかし、売らなければ事業は成り立ちませんね。
第5の穴:自分の体力に対する過信。現在の自分の体力の状態で物事を考えがちですが、起業したら5年や10年は続けますね。場合によっては20年。これを前提にして、続けられる働き方で起業を考えることが必要です。また、一人で起業したら自分の代わりはいないということもあります。そんなときにはどうするか、あらかじめ考えておくことが求められます。
3.定年後の起業で成功するために必要なこと1-ひとりで起業
フリーの研修講師、経営コンサルタントの大杉潤氏はその著書『定年ひとり起業』(自由国民社)で、ご自身が実践している「定年ひとり起業」の成功のポイントについて、次のように述べています。
・定年ひとり起業を成功させるための5原則
①50代または60代で起業
②ひとりで起業
③お金を使わない低リスク
④年金プラスアルファの収入を目指す
⑤長く働くことを最優先にする
・向いている仕事は、自らの経験・知識・スキルをまったく違う世界の人たちに「教える」「伝える」仕事
・準備は、50代で準備期間2年間がベストだが、個人個人の置かれた環境によって何歳でも可能
ここまでみて分かることは、定年後の起業には「ひとり」「低リスク」などで表されるスモールビジネスが最適であるということ。また、自分が持っているものを仕事にして長く続けること。そして,準備が大切ということですね。
4.定年後の起業で成功するために必要なこと2-正しい方法で,スモールビジネス
自らも起業家で1万人の起業をプロデュースした「起業のプロ」、 会社員のまま始める起業準備塾「起業18フォーラム」主宰などを行う新井一氏の言葉には、スモールビジネスに関する専門家の知見が豊富です。50代60代のわれわれ世代も共感できる部分が非常に多く、“目からうろこ“の言葉も少なくありません。
【起業18フォーラム】会社員のまま起業【副業/複業】できるコミュニティサロン「会社員のまま小さく起業(副業ベース)→独立または会社員継続の自由の獲得」を目指す、起業支援のプロが提供する「会社員のためkigyo18.net
最新刊の著書『朝晩30分好きなことで起業する』(だいわ文庫)の中で、会社員が陥りやすい起業の間違いパターンを述べています。
間違いパターン1:「資格を取れば起業できる」。資格というのは「足の裏についたご飯粒のようなもの」という言葉があります。「取るまでには気になって仕方ないけど、取っても食べられない」という意味です。いまや弁護士でさえ、食べていくのは大変な時代です。資格さえ取れば起業ができるという思い込みは捨てましょうと述べています。集客は簡単ではありません。そこで躓いたらビジネスは成立しませんね。
間違いパターン2:「すぐに始められる代理店ビジネスにとびつく」。保険の代理店、最近はフランチャイズも増えています。Aという会社から預かった商品を売って、手数料をもらうというビジネススタイルです。扱っている商材が自分の好きなもので、それを売ることが楽しいというのならいいですが、手っ取り早く始められるという理由の場合は、いつか会社員の仕事と同じになると述べています。
間違いパターン3:「先に始めている人の仲間に入れてもらう」。海外開発投資やネットワークビジネスなどが典型的な例です。「これは、避けてください」と警鐘を鳴らしています。さんざん食いつくされて終わりです。
そして,起業に必要なのは「好き嫌い」だと明確に述べています。会社員は,好き嫌いに関係なく言われた業務をやるのが習慣。起業は「好き」なことを仕事にするということです。
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また、別な著書『会社で働きながら6ヵ月で起業する』(ダイヤモンド社)では、50代60代を含め将来に不安を抱く多くの人が起業に注目している。お金の不安はもちろん、時間や意思決定の自由がないことを打ち破ろうとする人が増えている、といっています。
しかし、起業をしたことがない人が大半であり、「初めてやることですから、わからないことだらけでしょう。そうなれば,起業はやはりハードルが高いものと言わざるを得ません。」前半の方で触れた起業に踏み出せない理由であがっていた意見ですね。そこで新井氏がお勧めしているのが,「会社員のまま起業準備を始める」という方法です。「つまり,副業からやってみて,うまくいったら起業に切り替える。」というメソッドです。
この方法は,わたしのような再雇用会社員にとっても無理なく始められる方法としてたいへん有効だと評価できます。新井氏も,本の中で次のように述べています。
「実際,会社員のまま副業からスタートすれば,あれこれ試行錯誤ができるので,独立後に短期間で廃業に追い込まれるリスクを小さく抑えることができます。
貯金を失い,会社員にも戻れなくなってしまうといった最悪の事態を避けるためにも,まずは会社員であることを維持しながら,一歩踏み出すことをお勧めしたいのです。」
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起業準備期間について,大杉氏は2年程度,新井氏は最も小さな単位の事業でさえ最短で6ヵ月180日程度といっており,やはり標準的には1年から2年が必要と考えるのが妥当なところではないでしょうか。そうすると,定年退職前の50代後半から準備を始めるというロードマップを描くのがよいでしょう。わたしも大賛成です!
5.まとめ
今回は、前回に引き続き,定年後の「起業」についてみてきました。近年,50代60代の起業が増えていますが,失敗の要因や,成功するためのポイントを探って見ました。いかがでしたでしょうか。
起業セミナーも盛んに開催されていますので,是非参加して,疑問に思うところを聞いてみてください。わたしたちは,「定年」も「起業」も素人ですから,質問することを恥ずかしがる必要はまったくありません。
最後に「起業」で最も大切なことは何か,新井氏の言葉を紹介して本稿を締めくくりたいと思います。
「起業するということは,自分で決める人生を選ぶということです。人が決めたことをただやるだけなら,会社員のままでいればいいのですから。」
自分で決める覚悟が大切ということですね。あなたの主体性が問われるのが「起業」です。あなたは,定年後の仕事人生をどうしたいですか?考えていきしょう!