✅定年退職後も仕事をしている人の本音が見えてくる!✅定年前はどうだったのか?🌈貴重なインタビュー調査がここに! 🌈 50代は知っておきたい!
・定年退職者は、定年を迎えてどのように働き方を変えていったのか?その過程は何段にも分かれていて、簡単なものではありません。さらに、その理由は何か?本人の語ったことは…。
・今回から数回、定年退職者の仕事への取組み方の変化を研究し、インタビュー調査から体系的にまとめた『定年退職者の仕事のすすめ方 -前向きな行動につながっている要因について-』(萩野美鶴、2018年2月、北海学園大学大学院経営学修士論文)を参考に、一緒に考えていきましょう。読み返してみると、現在にも通じる素晴らしい知見が多数含まれています。
・1回目の今回は、研究の全体像および、定年退職者が実際に定年後の働き方を見直すプロセスについてみていきます。
1.萩野研究の全体像
・萩野さん(以下、「氏」といわせていただきます)の研究目的は、高年齢者雇用安定法のもと、希望すれば継続雇用が当たり前になった雇用制度のなか、定年後の仕事のすすめ方を具体的に明らかにするとともに、どのように、前向きに仕事をすすめているのか、その要因を検討することにありました。
・検討にあたり、詳細なインタビュー調査を重ね、分析を行っています。その結果を2018年2月に、大学院のマスター論文として書き上げ、論文集に収められています。(わたくしは、氏から個別にその論文を贈呈されました。)
・調査対象者は、59歳から66歳までの大手企業に勤務する男性10人。60歳までの時代を「現役時代」仮置きして、60歳以降の「定年後」とを比較します。
・さらに、対象者を4つのグループに分類します。
(1)グループは「継続雇用で同じ職域」、
(2)グループは「継続雇用で違う職域」、
(3)が「転職で同じ職域」、
(4)が「転職で違う職域」の4つのグループです。
・次に、インタビューの項目は以下の12項目。
①定年前の職務、職歴
②定年前に、定年後について考えたこと
③定年後の仕事につくまでの経緯
④定年後、仕事で変わったと感じること
⑤現在の仕事内容
⑥周囲の人たちとのやりとり
⑦新しい職場で仕事をすすめる上で、前向きな意識や行動に繋がっていると思われる要因
⑧役割の認識
⑨仕事で成し遂げたい思い
⑩培われた知識・スキルと自分らしい行動
⑪仕事の評価
⑫マイライフの充実
・このなかで、友人であっても、なかなか普段知り得ない事柄は、非常に貴重なものです。特に、②定年前に、定年後について考えたこと ④定年後、仕事で変わったと感じること ⑦新しい職場で仕事をすすめる上で、前向きな意識や行動に繋がっていると思われる要因 ⑨仕事で成し遂げたい思い ⑩培われた知識・スキルと自分らしい行動 ⑪仕事の評価 ⑫マイライフの充実 は、注目に値します。
・このインタビューでは、氏の飾り気のない性格が多いに役に立った、と後に語ってくれました。
・では、どのような結果となったか、はじめに研究成果の一つである「定年後の働き方を見直すプロセス」について、以下で詳しくみていきます。
2.定年後の働き方を見直すプロセス
・ここでは、定年前から定年となり、いろいろと立場が変わり、そして現在の働いている状況までのプロセスを詳細に6段階に区切って、時系列で分析しています。
・これも斬新な切り口ですね。わたしが、もっとも重要視しているライフシフトの変化点はどこで、何かを知る大きな手掛かりになりました。
・その6段階は、筆者が再整理して提示すると、以下のとおりです。
Step1:定年前の働き方
Step2:定年前に定年後について考える
Step3:定年を迎える
Step4:定年後の生活が始まる
Step5:定年後の仕事のやり方
Step6:定年後に、思う
・それぞれのStepでわかった知見を個別にみていきます。
(1)Step1:定年前の働き方は『仕事中心の暮らし』
・調査対象者の殆どの方は、勤務していた会社が航空会社、総合商社、鉄道、銀行などの大手企業であり、企業組織の一員として仕事中心の働き方をしていたことが分かりました。
・キーワードは、「緊張感がある競争社会」「企業名を背負っている」「休日より仕事を優先する」「転勤が多く、単身赴任も長い」といった発言が出ていました。
・現在の中高年サラリーマンと重なるといってもいいでしょう。わたしも50代前半までは、典型的な仕事優先人間だったなあ、と深く反省しております。
・現役時代、営業マンだった人は、「競争する実感、モチベーションも上がるし緊張感もある」「24時間、企業名を背負っていた」と話していました。
・生活面では、「週末は、かならず休日ということもなかった」と。子どもの学業を考えて、単身赴任せざるを得ない人も多くいました。
(2)Step2:定年前に定年後について考えていたことは『気持ちを切り替える』
・キーワードは、「能力を活かしてキャリアを継続させたい」「気持ちを切り替える」「ゆっくり暮らす」「健康第一」といった発言でした。
・皆さんが、定年後は新しい雇用条件、賃金のもとで働くことを理解していました。さらに、培ってきた知識を活かして、「継続したい」「出向先でもいい」という声が多くありました。
・「気持ちを切り替える」意識には、二つの意味が隠されていました。一つは、継続雇用者のグループにおいては、職務や責任範囲が変わり、周囲との関係および自らの立ち位置が大きく変化することを受け止めています。
・方や、転職したグループにおいては、単身赴任に区切りをつけるなど生活全般も見直す意味が含まれていました。
(3)Step3:定年を迎えて『予想しなかった現実に直面する』
・このStepのキーワードは、「仕事のやり方の違い」「立場が変わる現実」「家族からの言葉」「家でやることがない、体力も落ちる」といった発言です。
・定年を境に思ってもみなかった場面に遭遇しています。例えば、「責任がなくなるってこういうことなのかって思いました」「元部下が自転車で通りすぎていったんです。挨拶しなかった。それから暫く違うルートで出勤しました」など。職場では、「実務はしばらくやっていない」「事務所に居るとデータ入力作業を頼まれる」「定年から数年で辞めてしまう仲間もいる」ということが起きていました。
・生活面では、家族から「緊張感がなくなっている」と言われてドキッとしたと語っています。「家にはもう一人いる」「24時間いっしょに何日もいたら大変だ」。家族との過ごし方や距離感にも変化が生じてきます。
(4)Step4:定年後の生活が始まり『仕事や周囲の変化に戸惑う』
・このStepでのキーワードは、「思うように、こなせない実務」「(新しい仕事の)基礎知識が不足」「職制から離れる実感」「若い人たちへの気詰まり」といった発言が目を引きます。
・特に、継続雇用同じ職域グループにおいては、自分の立場をわきまえて、「直属上司が元部下」「仕事を頼むとき若い人に気を遣う」「ミーティングから離れる」「前に出ない、若い人に任せる」といった一歩引いた行動をとっています。
・転職グループにおいては、「社風が違う、時間がかかる」「周りの様子をみることも必要」のように、職場を客観的にみていました。
(5)Step5:定年後の仕事のやり方をおぼえ『仕事が着実に進みだす』
・このStepのキーワードは、「周囲と話し合いを深める」「役割を素直にこなす」「自分らしい行動パターン」「周囲のサポートがある」「居場所」です。
・定年後の再出発から、ある程度落ち着くまでの流動的な期間である点を考慮する必要があります。
・実務が増えてきて、仕事を進めていかなければならないため、培ってきたスキルや感性が活かされています。「現場に行って話を聞いて回る」「問題に優先順位をつける」「チームワーク、メンバー同士で感じてもらう」という動きが出て、話し合いの背中を押すなど、自分らしい行動で仕事をこなしています。
・また、次第に社内の連携ができて落ち着ける居場所になりつつあります。「信頼できるとサポートしてくれる人がいる」「忘年会や新年会も呼ばれる」と言います。
(6)Step6:定年後に、思うことは『納得して働く』ということ!
・最後のStepは、定年から少し時間が経過して落ち着きを取り戻した時期。この期間は、概ね1年から数年であろう。
・キーワードは、「自己を肯定する」「これでいい、満足している」「運がいい」「家族との適度な距離」などが上げられています。
・定年前の職制から離れて俯瞰的視野となり自己を肯定しています。落ち着けるきっかけの一つには、周囲からの反応、評価が得られてきていることが重要な影響を持っています。
・定年退職後間もない人と、65歳になろうとする人とでは、納得感に違いがあります。
3.まとめ
・いかがだってしょうか。ここまで、定年退職者のビフォー/アフターを本音を引き出して書いた論文・著作は、稀有なものであろうと、研究をしていて感じます。
・萩野氏の研究に、改めて、敬意を表します。
・定年後の働き方を見直すプロセスの6段階は、実にリアルで筆者自身に重なるとともに、周囲の人たちにも近い状況の人が多いと気づかされました。
・定年前の「仕事中心型」から、定年を迎え「予想もしなかった現実に直面」して、それらを克服して定年数年後には「自己を肯定」し「納得して働く」人たちに、多いに励まされました。
・全ての定年退職者が定年後に、これらの人たちのように幸せな形で、「定年後に、思う」ことは困難かもしれませんが、これから定年退職を迎える50代は、今の自分に、自信を持ちつつも、世界に対して謙虚に向き合っていけば、世界は受け入れてくれそうな気がします。
・勇気を持って、一歩だけ前に進みましょう!
・故アントニオ猪木氏の詩から『道』
「この道を行けばどうなるものか
危ぶむなかれ
危ぶめば道はなし
踏み出せば
その一足が道となり
その一足が道となる
迷わず行けよ
行けばわかるさ」
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