高齢の親が歩けるうちに、相続対策をしておいてもらった方がいいですか?

相続で最もたいへんなことは何だと思いますか?ひとそれぞれ感じ方が違うと思います。

・私は、「お金がらみ」の事だと感じています。相続人間での遺産分割。家族の間だけでも分割協議で大変そうなのに、そこに顔の知らない親戚が割り込んできたらどうなるだろうか、と想像してしまいます(笑)。

・たくさんの相続税を支払わなくてはならないとなると、「言っておいてよ!」と言いたくなります。

・故人に対して、「きちんと整理しておいてくれたらよかったのに!」と愚痴っても後の祭りです。

・一般的なサラリーマン家庭でも、預貯金や退職金、自宅などの財産を合わせると数千万円になり、相続税の基礎控除をオーバーする例は珍しくありません。このような状況から相続税への関心が高まり、連動する形で生前贈与が急増しています。

・年間110万円までの贈与は非課税であり、教育資金などを非課税贈与できる制度もあるため、場合によっては数千万円の生前贈与も可能です。

・生前贈与も含めて、生前にできる相続対策の基礎について、みていきます。

・高齢の親御さんを持つ50代、60代そして定年後の方々は、今からできる相続対策を覚えて実践してみましょう。

・親御さんの頭と体が元気なうちに、外出し歩けるうちに、親御さんと一緒になって相続対策を進めましょう。

目次

  1. 1.相続対策の基本的な考え方
  2. 2.生前贈与
  3. 3.不動産の持ち直しなど
  4. 3.トラブルにならずに遺産分割をするには、遺言が効果抜群
  5. 4.生前の財産整理
  6. 5.生命保険金による資金確保
  7. 6.不動産の現金化

1.相続対策の基本的な考え方


・円滑な相続を進めていくために必要なものが「相続対策」です。

・相続対策は個々のケースによって方法が異なってきます。しかし、基本的な考え方は同じなので、まずはその部分を押さえていきましょう。

・生前にできる相続対策としては次の三つがあげられます。

《生前にできる相続対策》
  ①生前贈与・不動産持ち直し
    相続税の金額を下げるもしくは基礎控除内に止めるための対策
  ②遺言・生前整理
    相続争いなど相続人同士での感情的、金銭的なもつれを引き起こさないための対策
  ③生命保険・現金化
    相続税の納付に用いる資金確保のための対策

2.生前贈与

・「生前贈与」とは、相続が発生する前に個人の財産を子や孫など他の方に贈与することで相続財産を減らしていくというものです。

・相続税は遺された財産の評価額を元に計算しますから、そのもともとの財産が減れば相続税も少なくなるというわけです。

・贈与にも贈与税が課せられますが、原則として1年間(1月1日から12月31日まで)に110万円までの贈与であれば非課税というルールがあります。

・この課税方式を「暦年課税」といいますが、このルールを利用して毎年コツコツと生前贈与を続けていけば、将来的な相続税の負担を極力抑えつつ、財産をゆずっていくことができるのです。

・生前贈与には、以下のように暦年課税方式以外の課税方式や非課税制度などがあります。これらを利用すれば相続財産を減らすことができます。

《生前贈与に関する制度》

・相続時精算課税方式
  60歳以上の贈与者が20歳以上の子や孫に贈与をした場合、2,500万円までが非課税になるというものです。ただし、相続時には贈与分を相続財産に加算することになるので大きな節税効果は期待できません。

  • 贈与税の配偶者控除の特例
    20年以上連れ添った夫婦であれば居住用の不動産あるいは購入資金の贈与が2,000万円まで非課税となる制度です。
  • 住宅取得等資金の特例
    父母や祖父母から住宅取得等のための資金の贈与を受けた場合、一定額が非課税となります(住宅のタイプや贈与時期によって非課税枠が異なります)。
  • 教育資金の一括贈与に係る非課税制度
    父母や祖父母から教育資金を一括贈与された時に1,500万円までが非課税となる制度です。
  • 結婚・子育て資金の一括贈与に係る非課税制度
    父母や祖父母から結婚・子育て資金の一括贈与を受けた時に1,000万円までが非課税となる制度です。

3.不動産の持ち直しなど


・相続税の制度に設けられている特例などを利用する方法です。特例などを上手く活用すると、財産の評価額を下げて課税対象額を減らすことができます。

・たとえば「小規模宅地等の特例」というルールを上手に使えば土地の評価額を最大80%(貸付けの場合には50%)減らすことができます。4,000万円の土地であれば800万円まで下げることができるので、大きな効果があります。
・また、不動産の場合は現金よりも7〜8割程度低く評価されるため、現金を遺すよりも土地や建物にしておくという方法もあります。

・1億円の現金なら評価額は1億円ですが、不動産なら7,000万円〜8,000万円前後で評価されるので、ここでも効果が生まれるわけです。

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3.トラブルにならずに遺産分割をするには、遺言が効果抜群


・相続で避けたいのは「相続争い」です。「争続」とも呼ばれますが、被相続人にとっては自分の配偶者や子どもたちが財産を巡っていがみあう状況を招きたいとは思わないでしょう。


・相続をきっかけに、それまで仲のよかった兄弟姉妹が、その後は一切のつきあいを絶ってしまったという話は珍しくありません。

・被相続人の配偶者が子どもたちの板挟みになって困惑するというケースも見られます。このような相続争いを起こさないためにはどうすればいいのでしょうか? 

・相続争いの原因は、「誰がどれだけの財産をもらうか」について相続人の意見が一致しない点にあります。そこで、生前に「遺言書」によってあらかじめ「誰に何を与えるか」を明確に指示しておくことが争いの抑止力となります。

・もっともこの場合、公平性に配慮する必要があります。

・たとえば「長男夫婦には世話になったから全財産を与える」ということになれば、ほかの相続人は不平・不満を感じるに違いありません。こうした不平・不満を法的手段によって解消しようという動きが出ることも考えられます。

・配偶者や第1順位・第2順位の法定相続人には「遺留分」といって最低限保障される取得分が決められているので、その請求手続きを行うことができるからです。

・法的手段にまで発展すると、感情的なもつれはより激しくなってしまいます。このような事態を招かないためにも遺言書の作成は一つのポイントとなります。

4.生前の財産整理

・相続税の手続きをスムーズかつ効率的に進めるための対策としては、まず相続財産の内容をすぐに把握できるようにしておくことです。

・相続財産がどれくらいあるのかわからなければ、分割方法・内容や相続税が生じるのかどうかも判断できません。

・被相続人があらかじめ相続人に財産内容を伝えておき、あるいは財産目録をつくって保管しておくことが対策として挙げられます。

・その際は、タンス預金などの存在もしっかりと伝えておきましょう。申告後に見つかると、あらためて申告し直さなければならなくなるからです。

・また、使っていない預金口座は整理し、負債も解消しておくようにお願いしましょう。
・こうすることで相続人は余分な手間から解放されますし、相続人間で面倒な手続きを押し付けあうことも少なくできるでしょう。

5.生命保険金による資金確保


・生活資金、納税資金の確保も忘れてはならないポイントです。

・相続税額を下げることはできたものの、いざ相続税を納めようとしたら資金がなかった……ということになりかねません。

・資金の確保に苦心するのは、相続財産に含まれる現預金が少ないケースや遺産分割協議がまとまらずに預金が引き出せない(被相続人の預金口座が凍結されているため)ケースが考えられます。それを踏まえて対策を講じておく必要があります。

・生命保険に入っておくという方法もあります。生命保険には相続税の非課税枠が設定されており【法定相続人の数×500万円】を死亡保険金から差し引くことができるのです。この生命保険の非課税枠を使う方法はポピュラーな節税対策として知られています。

・生命保険が相続対策に適している理由をみていきます。

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・①死亡保険金の非課税枠で相続税の節税対策になります。

・死亡保険金の非課税限度額は、「500万円×法定相続人の数」と相続税法に定められています。
・例えば法定相続人が3人いる場合には500万円×3人=1500万円が非課税枠として利用することができます。保険料を1500万円支払い、死亡保険金として1500万円を受け取ることになったとしても、相続税の課税額を減らすことができれば相続税の節税対策としては有効な方法だと言えます。

・しかし、契約者・被保険者・保険金受取人の組み合わせによって、かかる税金の種類が違うため注意が必要です。相続税の扱いとなるのは、契約者及び被保険者が被相続人・保険金受取人が相続人の場合なので契約内容を一度確認しておくとよいでしょう。

・②相続税の納税資金確保に有効です。

相続税の申告及び納付は、被相続人が亡くなった翌日から10ヶ月以内にしなくてはなりません。
・相続税の支払いは現金でしなくてはいけないので、相続財産の大部分を不動産が占めている場合には、相続税の納付資金を確保する必要があります。
・不動産を売却しようとしても買主がすぐに見つからないかもしれないですし、見つかったとしても適正価格よりも低い価額で売ることになってしまうかもしれません。

・また現金を借りる方法もありますが、直ちに確保できない心配もあります。
・そのような場合には納税資金と同等の生命保険に加入しておけば、不動産処分などの方法を取らずに相続税の納付資金の確保をすることができます。

・③相続開始後にすぐ入金される。

・相続が発生すると、被相続人の預貯金の口座は凍結されてしまい、預貯金を口座から引き出すことができなくなります。

・現金を引き出すには遺産分割協議を整えて金融機関に対して相続の手続きを行う必要があり、時間がかかってしまいます。

・人が亡くなると葬儀費用などでまとまったお金が必要になることも多くあります。預貯金の仮払い制度で当面の費用を被相続人口座から出金する方法もありますが、手間もかかりますし限度額も存在します。

・生命保険であれば、書類に不備がなければ書類が到着した日の翌日から起算して5営業日位で保険金受取人に支払われることが多いようなので、すぐに死後事務にかかる金銭を用意することが可能になります。

・④受取人を指定できる。

・死亡保険金の保険金受取人は当然指定することができます。


・相続人が複数いる場合には遺産分割協議の際にトラブルになることもしばしばありますが、あらかじめ指定することにより保険金受取人の固有財産となるため、トラブルになる可能性を減らせることが期待できます。

・また生命保険金の受取人を分けることもできるので、複数の相続人がいたとしてもそれぞれが受け取れ、スムーズな遺産分割が可能となります。

・⑤相続放棄しても受け取れる。

・相続放棄とは被相続人の財産についてプラスの財産、マイナスの財産も含めて一切の相続権を手放す手続きです。

・相続放棄をした人は相続人ではなくなります。しかし、生命保険金は民法上の相続財産ではないため、相続放棄をしたとしても保険金受取人になっていれば受け取ることができます。

・⑥遺留分対策として使える。
 
・遺留分は最低限保障されている相続割合のことです。遺留分権利者としては兄弟姉妹以外の法定相続人と規定されています。

・遺留分割合を無視した相続割合が遺言で指定されている場合には、遺留分権利者は遺留分侵害額請求をすることができます。

・しかし、前述の通り生命保険金として受け取る金銭は、基本的に相続財産の対象から外れます。そのため遺留分の対象としても外れます。よって、生命保険金は遺留分対策としても使えると言えるでしょう。

6.不動産の現金化

・不動産などの遺産の現金化による対策方法。相続財産に含まれる現預金が少ないケースから考えてみましょう。

・不動産や株などすぐには現金化しにくい財産が多くを占めていることになります。

・そのため、被相続人が存命中に土地や株を現金化しておくといった対策が考えられます。

・遺産分割協議に関していえば、遺言書の作成などで対策をしておきます。

・以上、相続対策の基礎をみてきました。

・相続対策をより安心なものにするためには専門家の力を借りることが有効な手段ですので検討してみましょう。様々なサポートも提供してくれるので、より万全を期すことができるといえます。