遺産分割協議で生前は仲が良かった兄弟姉妹が仲違い?どうして!
・相続人となる人が確定し、遺産の内容・価値が確認できたら、いよいよ遺産分割協議に進みます。
・被相続人が遺言書を残していない場合や、遺産分割を相続人で決定したい場合に実施する話し合いのことです。
・遺産分割協議では、互いの譲歩や自重がとても重要になります。
・相続財産をめぐっては被相続人の生前は仲の良かった兄弟姉妹で骨肉の争いに発展する…というようなケースも決して珍しいことではありません。
・「親族同士では感情のもつれがあってどうしても協議が先に進まない…」などの場合には、弁護士に入ってもらうことも検討してみましょう。
・今回は、この遺産分割協議について争点ななりがちな点、や遺言書と異なる遺産分割の条件などについてみていきます。
・50代、60代そして定年後に高齢の親御さんが亡くなったときに慌てないよう、覚えておきましょう。
目次
- 1.相続人の一部と連絡がとれない場合の対処法
- 2.遺産分割でどんなことが争点になりますか?
- 2-1 被相続人からの生前贈与・援助に差がある場合
- 2-2 同居家族・介護していた家族がいる場合
- 2-3 遺言書の内容と異なる場合
- 2-4 遺産に建物や土地が多くを占める場合
- 3.遺言と異なる遺産分割をするための条件
- 4.相続でもめると遺産分割調停に発展
1.相続人の一部と連絡がとれない場合の対処法
・遺産分割協議は、法定相続人全員が参加しなければなりません。
・遺産分割協議では必ずしも全員が顔を合わせて協議を行わなくてはならないというわけではありません。分割案を郵送等のやりとりで書面によって意思表示をしてもらう方法でも、遺産分割協議は成立します。
・しかし、相続人の中に連絡が取れない人がいる場合には、署名捺印ができないため遺産分割が成立せず、問題となります。法定相続人の資格がある人を無視して遺産分割はできないからです。
・相続人の一部と連絡がとれない場合には、次の対処を行ってみます。①まずは本人への連絡を試みる、②家庭裁判所に不在者財産管理人を選任してもらう、③家庭裁判所に失踪宣告を出してもらう。
・まずは、対象となっている人物に連絡を取ってみます。親族や家族のなかには、該当の人物と連絡を取ることができる人がいるかもしれません。
・不在者財産管理人を家庭裁判所に選任してもらうようにします。家庭裁判所によって利害関係のない第三者が選任されます。
・もし行方不明の相続人が7年以上生死不明の場合は、失踪宣告(普通失踪)を出してもらうことができます。自然災害などに起因する生死不明の場合は、「特別失踪」として行方不明から1年以上経過していれば申請可能です。
・失踪宣告を出すことによって法定相続人から除外されます。ただし、失踪宣告を出した人物の法定相続人がいる場合は、対象者が遺産分割協議に参加することができるため注意が必要です。
・この対象者とは、代襲相続人です。行方不明の法定相続人がいる場合は、その法定相続人の有無まで確認しなければなりません。
2.遺産分割でどんなことが争点になりますか?
・遺産分割で揉めやすいポイントが何点かあります。これを避けることで、遺産分割をスムーズに行うことができます。
《遺産分割で揉めやすい場合》
①被相続人からの生前贈与・援助に差がある場合
②同居家族・介護していた家族がいる場合
③遺言書の内容と異なる場合
④遺産に建物や土地が多くを占める場合
2-1 被相続人からの生前贈与・援助に差がある場合
・被相続人から生前贈与や援助がある場合、原則生前に遺産を分割されていれば遺産分割協議の対象である「相続財産」にはなりません。
・被相続人との契約に相当するため、一方的な放棄もできないようになっています。
・ただし「特別受益」と呼ばれる特別な相続を得ている場合は、相続開始から10年の間に行われた特別受益持ち戻しの対象とすることができ、相続財産にすることができます。
・相続開始から10年以上経過しているものについては、この対象とならないため注意が必要です。
・生前贈与や援助については、主に兄弟関係でトラブルに発展しがちです。
・兄弟で遺産相続のトラブルが起きないよう、事前に知識を付けておきましょう。
2-2 同居家族・介護していた家族がいる場合
・被相続人と同居していた家族や介護をしていた家族に、遺産分割でその分が考慮され多めに配分されるかといわれると必ずしもそうではありません。
・同居や介護は「特別寄与」と呼ばれる行為にあたり、認められれば相続できる財産がプラスされます。
しかし、「特別寄与」であったかどうかを認めるのは、他の法定相続人です。
・言い換えれば、他の法定相続人が「特別寄与」である同居や介護を認めなければ、相続において財産の取り分を多くすることそのものが考慮されないのです。
・同居や介護の事実が明確で、他の法定相続人に認めてもらうには、被相続人に遺言書を残してもらうのが効果的です。
・遺言書に記載がない場合は家庭裁判所にて不服申し立てを行うこともできますが、過去の判例を見てもそれほど多額の配分がなされたわけではありません。
・特に気を付けたいのが、長男家族が同居や介護を行っている場合の遺産分割です。
2-3 遺言書の内容と異なる場合
・一般的に「遺言書」というと、いかなる内容であっても従わなければならないと考えている人もいるでしょう。しかし、遺言書のなかには効力を発揮しない、無効の遺言書も存在します。
・例えば遺言書を作成した被相続人が15歳以上であっても、認知症などで法律上意思能力がないと判断される場合は、遺言書が無効になります。
・また、遺言書が効力を発揮するには所定の要件があり、それらを満たしていないものも無効扱いです。遺言の要件については別稿で書きたいと思います。
・遺言書のルールは非常に細かく、法定相続人だけで有効か無効かを判断しにくいものもあります。
・相続人全員の同意があれば、遺言と異なる遺産分割が可能です。後段で詳しく書きます。
2-4 遺産に建物や土地が多くを占める場合
・遺産分割において相続方法に悩むのが、建物や土地などの不動産関連です。
・分割して共有することもできますが、売却や賃貸借する場合には共有者全員の同意が必要になるなど、管理の手間が発生します。
・現物分割する場合でも、あまり土地が大きくない場合は、財産的価値が大幅に低下する可能性も考えられます。
・代償分割や換価分割も可能ですが、この場合は結局不動産がいくらになるのかが争点になるでしょう。
結論としては不動産会社に買い取ってもらい、その金額を分割することになります。
・揉めることが多い相続財産だけに、話し合えるのであれば被相続人の生前からどうするのかを相談しておくのがベターです。
3.遺言と異なる遺産分割をするための条件
・故人が遺言で遺産分割について定めている場合は、通常はそのとおりに遺産分割をします。遺言は故人の最後の意思表示であり、最大限尊重されるべきものとされています。
・ただし、遺言のとおりに遺産分割すると、相続人の不利益になる場合もあります。このような場合には遺言と異なる遺産分割をすることができます。
・遺言と異なる遺産分割をするにはいくつか条件があるほか、遺産分割の手続きでも注意するべき点があります。
- 遺言と異なる遺産分割をするための条件遺言で遺産分割が禁止されていない
- 相続人全員の合意が必要
- 遺言執行者がいれば同意が必要
- 相続人でない受遺者がいれば同意が必要
・遺言で遺産分割が禁止されていない。遺言では、遺産分割の方法を指定するほか、死亡から5年を超えない期間を定めて遺産分割を禁止することもできます。
・したがって、遺言と異なる遺産分割をするためには、遺言で遺産分割が禁止されていないことが前提となります。遺言に遺産分割を禁止する内容の記載がないか確認しましょう。
・相続人全員の合意が必要。遺言に遺産分割を禁止する内容の記載がなければ、遺産分割協議によって相続人全員が合意することで遺言と異なる遺産分割が可能になります。
・遺言執行者がいれば同意が必要。遺言では遺言執行者を定めることができます。遺言執行者が相続人でない場合は、遺言執行者の同意を得ることも必要です。
・遺言執行者の同意は、民法で明確に求められているわけではありません。しかし、遺言執行者がいるとき相続人は遺言の執行を妨げてはならないとされていることから、遺言執行者の同意を得ておくことは必要と考えられます。
・相続人でない受遺者がいれば同意が必要。遺言で相続人以外の人に遺産を渡すように指定されている場合は、その人(受遺者)の同意も得なければなりません。
4.相続でもめると遺産分割調停に発展
・相続の話が法定相続人同士では決着を見ない場合、家庭裁判所に申し立てて遺産分割調停に発展します。
・遺産分割調停とは、利害関係のない調停委員が法定相続人の間に入って話し合いを行い、遺産分割を取りまとめる方法です。
・法定相続人全員が納得できる形の提案を行います。
・感情的になってしまって遺産分割協議が進まない場合は、冷静な話し合いができるため非常に有効な方法です。
・反面、時間も費用も掛かってしまううえ、自分の主張がすべてまかりとおるわけではありません。
・万が一調停不成立となった場合が、自動的に遺産分割審判に移行します。
・法律に従った遺産分割が行われることとなります。この時に必要となる審判書の作成も、調停委員が行ってくれます。