定年後に再就職するにはどうすればいいの?どんな仕事があるの?

1.50代~60代前半の転職理由、求人

少し古い情報ですが、厚生労働省が「雇用の構造に関する実態調査(転職者実態調査)平成27年」で年代別に、自己都合退職した人が直前の勤め先を離職した理由(3つまでの複数回答)を調査しています。

60~64歳における転職理由のトップは「賃金が低かったから」、次いで「満足のいく仕事内容でなかったから」、3番目は「人間関係がうまくいかなかったから」となっています。

自己都合退職した人が直前の勤め先を離職した理由(3つまでの複数回答)
 <50~54歳>
  1番目:労働条件(賃金以外)がよくなかったから
  2番目:満足のいく仕事内容でなかったから
  2番目:人間関係がうまくいかなかったから
 <55~59歳>
  1番目:満足のいく仕事内容でなかったから
  2番目:会社の将来に不安を感じたから
  3番目:労働条件(賃金以外)がよくなかったから
 <60~64歳>
  1番目:賃金が低かったから
  2番目:満足のいく仕事内容でなかったから
  2番目:人間関係がうまくいかなかったから

現在と多少事情は異なるとはいえ、60代前半の人は、「定年になって給与が急激にダウン」⇒「仕事内容も変わり満足のいく仕事ができない」⇒「部下もおらず、年下上司との人間関係もうまくいかない」、というように我慢を重ねて心の限界がきて、転職を選択したという心理の流れが推測できます。

しかし、同じ調査で、現在の勤め先を選んだ理由(3つまでの複数回答)をみると、60~64歳では「賃金が高い」は最も低いグループになり、トップは「自分の技能・能力が活かせるから」、次いで「仕事の内容・職種に満足がいくから」が上位グループとなっています。

賃金の高さを希望していては、再就職が困難である現実が見えてきます。収入はある程度まで譲歩しなければ就職は厳しいといえますね。

一方、求人の状況はどうかというと、厚生労働省が調査した「一般職業紹介状況」をみると、2019年までの60~64歳の求人倍率は10年前に比べて2倍以上の1.0倍(求職者1人に対して1件求人がある良い状況)になっています。定年後の求人倍率は年々増加傾向にあり、仕事を見つけやすくなっているといえます。

定年後の職種をみると、60~64歳と65歳以上で大きな変化が起きています。60~64歳は再雇用者も多く存在していることを考えると、再就職の実態により近いのは65歳以上のデータと思われます。2019年の65歳以上の職種別従業員割合のトップは「サービス業」15%、2番目は同率13%で「運搬・清掃・包装」「農林漁業」(専門職・技術職)となっています。デスクワークである「事務職」は60~64歳のトップの19%から、11%に低下しています。

つまり,現業職が増えて職種は多様化します。現業職の例は,サービス業,保安職業,輸送・機械運転,建設・採掘,運搬・清掃・包装等,農業などです。

実際,60代を採用する企業側はその理由を,「豊富な経験」,「給与を安く抑えられる」,「専門性が高い」となっています。多くは非正規社員での採用であっても,週3日勤務や短時間勤務が多いのも実態です。

つまり,マネジメントというよりも,経験だったり,専門性だったり,現場で若手よりも安心して任せられる点などに企業の期待が高いということが見て取れます。非常に大事な部分ですね。

2.「再就職」のメリット

60歳の定年後に退職し、新しい職場に再就職するメリットにはどんなことがあるのでしょうか。主に、次の三つがあげられます。

「再就職」のメリット
 ①65歳以上も働き続けられる 
 ②スキルや人脈によっては仕事内容を選択できる
 ③「高年齢再就職給付金」を受けられる

・(③の「高年齢再就職給付金」を受けられるは、前回のブログに書きましたので省略します。)

はじめに、再就職では、65歳以上も働き続けられる仕事を探すことができます。「再雇用」では64歳までは働けても、65歳以降の雇用はありません。その点、60歳のうちに長く働ける職場を見つけることができます。

次に、今まで培ってきた経験やスキル・人脈を活かして働くことが可能になります。新しい分野に挑戦するのもその一つです。逆にいえば、スキルや人脈がないと職種が限定され、専門知識、技術がないと希望の専門職や事務職などに就くことは難しいでしょう。また、低賃金での雇用になる可能性もあります。

3.仕事の探し方と具体的な仕事は?


再就職先を探す方法は主に、ハローワーク、民間の人材紹介会社、求人サイト、知人からの紹介があります。以下では一つずつみていきましょう。

ハローワークは,正式名称が公共職業安定所。厚生労働省が管轄する職業紹介事業です。全国に300か所があり,シニア世代の就職相談窓口として「生涯現役支援窓口」が設置されています。求人情報の提供,職業訓練,就職活動の相談などを行っています。雇用保険を受給しながら無料で職業訓練の講習を受けることができます。

続いて,人材紹介会社。民間の人材紹介会社も多数存在しています。相性の良さそうな会社に登録しておくのもありです。しかし,紹介会社任せにしないで,自分で動くことを最優先にしたいですね。

つぎは,シニア向け求人サイト。勤務地,職種,土日祝休み,未経験歓迎,短時間勤務など自分の条件に合うように検索できます。ハローワーク,人材紹介会社と合わせて利用します。タウンワーク,リクナビ派遣,グラン・ジョブなどシニア世代の求人が豊富なサイトがあります。

知人の紹介なら,求人票だけではわからない職場の雰囲気や仕事内容の詳細などを事前に知ることができます。

また,60歳以上を積極的に採用している企業もありますので,幅広く事前調査をすることをお勧めします。

具体的に人材紹介会社などで60代,シニア世代に求人・転職情報がある仕事はどのようなものでしょうか。

マンション・ビル管理人。経験値の高さや,人当たりのよさなどの要素が求められます。競争率は高く,ボイラー技士や消防設備士,マンション管理士といった資格が保有しておくと有利です

警備員。短時間の研修を受講するだけで,比較的仕事につきやすい職種です。深夜時間などはニーズもあり時給単価も高めになります。

清掃員。必要な資格がないことや,ビルや公園など幅広い需要があることなどが人気の理由。

4.再就職に求められる準備、注意点

「再就職」を目指す場合、有利な条件の会社に就職するためには、50代のうちから早目に準備をすることが大切になります。行き当たりバッタリで、「退職後、一度、ゆっくり休んでから!」再就職をするのでは、スキルの低下や知識・技能の陳腐化をまねき、企業側の採用意欲を低下させる要因になります。希望に合った再就職先につける可能性を高めるためには、しっかりとした時間と準備がとても重要です。

「定年後も働きたい。」の著者でシニアライフアドバイザーの松本すみ子氏は,オスカー・ワイルドの「老年の悲劇は彼が老いたことにあるのではなく,まだ若いと思うところにある」という言葉を引用しながら,問題なのは定年後の自分の人生や仕事に関して考える時間を持たなかったことであり,意識的に悩み,考える時間を作ることを推奨しています。

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準備には大きく3つの段階があるといわれています。最終的には、「職務経歴書」「就職希望理由書」などに記載するイメージで捉えるとよいでしょう。
一つ目は、経験、スキルやキャリアを洗い出し「自己棚卸し」をします。自己分析を行いながら自分を見つめ直してみることです。

二つ目は、洗い出した自分のスキル・キャリアから、自分の特性や希望に合った職種を考えます。分野を絞ったうえで、現実的に、どんな職種なら求人があるのか、定年後も長く働けるのかなどリサーチを行います。

三つ目は、資格・スキルを身につけておくことです。再就職したい職種を明確にしたら、介護福祉士やマンション管理士などどんなスキルや資格が必要かを検討します。定年までに身に付けられるよう計画・受験していきます。

『定年前後「これだけ」やればいい』の著者であり,人材紹介会社代表の郡山史郎氏は,中高年に来てほしいという会社は増えていてもそうはないといいます。

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再就職希望者と採用する企業との間でミスマッチが起きているとし,その内容は「シニアの求人が少ないというのは,デスクワーカーの場合である。体力を使う仕事であればシルバー人材センターや運送会社のドライバー,建設現場のほか,地方に行けば農業など,いくらでもある。」とやや再就職者側に厳しい視点から解説していますが,実情を表しているのでしょう。

5.まとめ

「再就職」のメリットには,①65歳以上も働き続けられる,②スキルや人脈によっては仕事内容を選択できる,③「高年齢再就職給付金」を受けられるといったメリットがありました。

そのためには,50代から定年後の仕事を具体的に考えていくことが大切です。意識的に悩み,考える時間を作る,そして,定年前に準備を終わらせる,といった計画性が求められます。

知人・友人からの紹介でもない限り,自分自身で積極的に動いて働き先を探す覚悟も必要です。
一般的には,給与の高望みは難しいですね。再就職した後の時間の使い方を緩くできる可能性の方が高そうでした。

あなたの望む働き方,生き方は何ですか?大いに,かつ意識的に悩みましょう!悩んでいる方はすでに大切な一歩を踏み出しています!