定年前後の3度の収入ダウンに備える

1.50歳半ばからの収入ダウン

入社以来,緩やかながらも上昇してきた給与収入ですが,50代前半をピークに頭打ちになります。60歳で引退,年金生活へと思い描いていたところに,65歳定年延長の声とともに「役職定年」が導入され,わが身に覆いかぶさってきた!というのが,50代前半の多くの会社員の偽らざる心境ではないでしょうか。

わたしの場合,57歳で2割ダウンし,かなりショックを受けました。家内からは,「小遣いもダウンしますから!」と,こちらは5割ダウンとさらに大幅な削減になりました(厳しい現実!)。

人事院の調査によれば,役職定年制度は,500人以上の起業の約3割で導入が進んでいます。高収入の50代前半の社員が数多く在籍していることは,企業にしてみれば大きな負担です。現在,多くの企業で,この年代層を対象にした給与体系の見直しを行っています。65歳定年が義務化され加速化しています。

名称が「役職定年」ではない場合もありますので,自分が勤めている会社には「役職定年」がないからといって安心していいわけではありません。

収入の低下レベルは,2~3割というところが大半のようです。企業によって異なりますが,役職定年を迎えた社員の処遇は,専門職への転換,もしくは単に一般社員としての処遇になります。定年前に管理職のプレッシャーから開放されて楽になる人もいるかもしれませんが,「会社に貢献してきたのに!」と自負を持つ人であればあるほど,働く意欲もダウンさせる大きな要因となります。働く理由の全てが収入のためではありませんが,やはり給与が下がることはモチベーション低下に密接に関わってきます。

2.定年再雇用後の収入ダウン

二つ目の収入ダウンは,60歳のときに訪れる「再雇用」です。以前にもふれたように,60歳で定年を迎えた人の8割が,会社と再雇用契約を結び,継続して働くことを選択しています。継続雇用であれば慣れ親しんできた会社・職場で働き続けることができるわけですから,精神的にはかなり負担が少なくてすみます。ただし,収入が落ちることは覚悟する必要があります。

労働政策研究・研修機構の調査によれると,継続雇用を選択した場合,約4割の人が定年前に比べて賃金が60%以下になるということです。また,平均年収は375万円だそうです。総支給額ですから,手取りは300万円を割ることになります。

3.65歳引退後の年金生活

収入ダウンの三つ目は,「年金生活」です。再雇用が65歳で終了すると,めでたく引退,年金生活がスタートします。もし新たな稼ぎ口を探さなければ,収入源は公的年金のみになります。夫婦二人で平均的な厚生年金は月22万円程度と,50代の収入に比べ大きくダウンします。なお,企業年金が受給できる場合は,若干余裕がでますが,これも10年程度の受給期間が一般的です。長生きリスク全体に対応するのは難しいのが実態です。

4.退職金を使う前に考えよう!

50代後半から3度大きな収入ダウンに見舞われることをみてきました。愕然とした方も多いのではないでしょうか。50代までと同じお金の使い方をしていると,毎年の収支は赤字必至です。是非,今の生活費を見直すキッカケにしてください。
60歳時(もしくはその前に)受け取る退職金があるから大丈夫と決め込むのはまだ早いです。ノープランで定年以降の生活を開始すると,あっという間に退職金は目減りし,70歳くらいで貯蓄が底をつくことになります。典型的な老後貧乏のパターン。

毎月40万円の生活を継続すれば,再雇用での手取り額が月25万としたら,毎月15万円の赤字です。1年間で180万円,10年で退職金の1800万円が消えてしまいますね。

これが,年金生活になれば,夫婦二人の年金額は月22万円とさらに低下しますので,預貯金の取崩しが大きくなります。公的年金だけでは暮らせないことを退職金を使うまえに知っておくことが肝心です。

5.家計簿をつけよう!長く働く準備をしよう!

一度,老後までの生活資金をシミュレーションしてみることをお勧めします。収支を見える化してご家族と話し合い,コミュニケーションを深める良いチャンスにします。

『サラリーマン女子 定年後に備える』(大江加代著)で大江さんは,収支をあまり難しく考えずにザックリわかる方法を提言しています。

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大きく「支出」と「収入」,差し引いた残りが「準備が必要なお金」になるように計算します。「支出」には,生活費,一時出費,イベント費,医療費,介護費などの備えも加えておきます。「収入」には,金融資産,公的年金,退職金・企業年金を入れます。老後の暮らしに必要な支出と収入を棚卸しして差引きすれば,「準備すべき額」がわかります。

①すぐにもできる対策その1:家計簿をつける

同書で,定年を迎える前に取り組みたい家計改善として提言してるのが,「家計簿をつける」です。いまは,スマホの「家計簿アプリ」がおすすめです(わたしも使ってます)。家計簿をつけて,支出のムダをチェックします。削ると効果的な支出としては,・使っていないカードの年会費,・高額な死亡保障の保険料,・民間の医療保険などの保険料,・使っていないスマホの有料アプリ,などなど。収入があるうちに,必要なものだけにお金をかけるようにしておくと,定年後もスムーズに「スリム家計」に移行できると唱えてらっしゃいます。我が家でも,わたしの小遣いダウンは当たり前,保険の解約・見直し,家族のスマホの契約変更,新聞購読中止等々スリム家計に取り組んでいます。

②すぐにもできる対策その2:長く働く準備をする

出来るだけ長く働くための準備を始めることです。「人生100年時代」に65歳以降も働き続けることのメリットは,収入を得る期間を長くすればするほど,資産を取り崩すタイミングを遅らせたり,取り崩し額を減らすことができます。資産が長持ちし,長生きリスクに対処できるようになります。また,収入を得ることで,公的年金の支給開始を遅らせることができれば年金額が増えるのでこれも大きなメリットになります。さらには,楽しく働きつづけることで,生きがいを感じ老後を充実したものにできます。このためには,50歳くらいからキャリアを棚卸しして,長く働くための準備を会社員を辞めるまでの10年から15年の間にしっかりやっておくことが大切です。

6.まとめ

今回は会社員が,50歳半ばから65歳までに見舞われる3度の急激な収入ダウンについてみてきました。退職金は将来の備えに上手に使いましょう。そして,定年前からできる二つの対策,①家計簿をつける,②長く働く準備をする,で備えていきます。