亡き母の「遺言書」が仏壇から出てきた!開封してしまったらどうなるの?

・人が亡くなった後、その人が書いた「遺言書」を見つけた場合、つい開封してしまうことがあるかもしれません。

・ 相続手続きを進めていくうえで、「遺言書」の有無は大きな影響を与えていきます。生前に「遺言書」を残す話を聞いていたのであればいいのですが、「遺言書」のことを何も話していない可能性もあります。

・もし、「遺言書」の話をしたことがなかったとしても故人が「遺言書」を残している可能性もありますので、必ず遺言書調査を行います。

・今回は、「遺言書」の探し方、「遺言書」を見つけた際の取り扱いなどについてまとめてみました。

・50代60代、そして定年前後の方は、高齢の親御さんにもしものことがあったときに慌てないように、今から備えておきましょう。

・その前に「エンディングノート」と遺言書の違いについて簡単にみておきます。

目次

  1. 1.エンディングノートとは
  2. 2.エンディングノートと遺言書の違い
  3. 3.遺言書とは
  4. 4.自筆証書遺言書を作成するには
  5. 5.生前に遺言書の話をしてませんでしたか?遺言書の調査方法
  6. 6.遺品から自筆証書遺言を探す方法
  7. 7.遺言書を勝手に開封したら?
  8. 8.検認の手続き
  9. 8-1.検認の請求
  10. 8-2.検認の流れ

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1.エンディングノートとは

・エンディングノートとは、いざというときに備えて、自分のことや家族への思いなどを書きとめておくノートです。

・書店や文房具店、ネット通販などで多くの種類が販売されていますし、葬儀・相続などの本や雑誌についている付録などにも使われていますね。

エンディングノートには、大まかに次のような項目があります。
(1)自分について(経歴、趣味、好きな食べ物、友達、活動グループなど)
(2)財産(預貯金や有価証券、不動産、生命保険証書など)と遺産相続について
(3)デジタル資産(パソコンやスマホのパスワードなど)
(4)家族や親族、親しい友人への想い
(5)末期の医療や介護についてどうしてほしいか
(6)お葬式の仕方の希望や出席者してほしい人の連絡先など

・エンディングノートを記入する際には、書く項目の順番を気にする必要はありません。また全ての項目を埋める必要もありません。気軽に書けるところから書いて、少しずつ書き進めていくのが完成させるコツのようです。

2.エンディングノートと遺言書の違い

・エンディングノートと遺言書の一番大きな違いは、エンディングノートには法的効力はありませんが、遺言書には法的効力があることです。

・ただし、遺言書が法的に有効であるためには、決まったルールで書かなければならず、費用もかかります。

・その点、エンディングノートは気楽に自由に書け、費用もほとんどかかりません。
 

3.遺言書とは

・遺言書には、おもに本文を自筆で作成する「自筆証書遺言書」と遺言者の口述を聞いて公証人が作成する「公正証書遺言書」があります。

・自筆証書遺言書は自分で作成するため費用はほとんどかかりませんが、公正証書遺言は作成するのに費用がかかります(財産額や相続人の数などにもよるが、一般的には5万円~10万円前後)。
 

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4.自筆証書遺言書を作成するには

・自筆証書遺言書は、便せんなどの用紙に容易に消えないインクで、本文をすべて自筆で書く必要があります。

・財産目録については、ワープロ作成や証書のコピーなどでも良くなりました。本文には、日付(吉日などと書くのは無効)と署名、押印が必要です。印鑑の種類は必ずしも実印でなくて大丈夫です。
 
・2020年7月より法務局での「自筆証書遺言書保管制度」が始まりました。法務局に自筆証書遺言書を預かってもらうことで(保管費用は3900円)、保管上の心配がなくなり、開封時の家庭裁判所による検認も必要なくなりました。

5.生前に遺言書の話をしてませんでしたか?遺言書の調査方法

・故人が残した遺言書の調査方法は、大きく公正証書遺言と自筆証書遺言の場合で変わってきます。

<種類別の遺言書調査方法>
①公正証書遺言…公証役場で遺言検索システム
②自筆証書遺言…自宅等で遺品の中から探索
③自筆証書遺言(法務局保管)…法務局で遺言書情報証明書の交付

・自筆証書遺言の場合、法務局に遺言を保管しているか否かで調査方法が異なりますので、注意が必要です。

公正証書で作成された遺言書(公正証書遺言)であれば、日本公証人連合会の遺言書検索システムを利用して、検索することが可能です。

・この遺言書検索システムは、日本全国の公証役場が対象となりますので、最寄りの公証役場から日本全国で作成された公正証書遺言を検索することが可能です。

・この検索システムによってわかるのは、①遺言書の有無、②どこの公証役場に保管されているのか。この2点だけです。つまり、遺言書の内容まではわからないのです。

6.遺品から自筆証書遺言を探す方法

・法務局保管以外の自筆証書遺言については残念ながら、公正証書遺言のような検索システムは存在しておりませんので、故人の自宅や部屋の遺品から探していくしかありません。

・貸金庫に保管しているケースもありますが、貸金庫を空けるためには銀行での相続手続きをしなければならないため、時間がかかってしまいます。

・まずは自宅内の重要なものが保管されている場所を徹底的に探索して、もし見つからなければ、遺言書はないものとして進めていくほかないでしょう。

7.遺言書を勝手に開封したら?

・故人が作成した自筆証書遺言を開封するためには、検認を行わなければなりません。

・この検認は家庭裁判所で行われます。もしも検認を行う前に勝手に開封した場合、その人には罰則が適用される可能性があります。
 
・民法には、「遺言書の保管者は、相続の開始を知った後、遅滞なく、これを家庭裁判所に提出して、その検認を請求しなければならない。遺言書の保管者がない場合において、相続人が遺言書を発見した後も、同様とする」と規定されています。

・さらに、「封印のある遺言書は、家庭裁判所において相続人又はその代理人の立会いがなければ、開封することができない」となっています。そして、勝手に遺言書を開封した人には、5万円以下の過料が課せられます。
 

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8.検認の手続き

・では、検認の手続きとはどのような手順を踏んで行うのでしょうか。
 

8-1.検認の請求

・遺言書を見つけた人は、遅滞なく家庭裁判所に対して検認の請求を行います。

・請求先の家庭裁判所は、亡くなった人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所です。検認の請求を行う際には、遺言書1通につき収入印紙800円がかかります。
 

<検認のために必要な書類>
・申立書
・亡くなった人の戸籍謄本(出生から死亡までの情報がすべてわかるもの)
・相続人全員の戸籍謄本、など
 

8-2.検認の流れ

・検認の申し立てを受けた家庭裁判所は、以下の流れで検認を行います。

1.裁判所から相続人に対して検認を行う日を通知
2.検認を行う日に相続人が家庭裁判所に赴く(その際、申し立てた人は遺言書を持参)
3.出席した相続人の立ち会いのもとで、裁判官が開封し、検認を行う
4.検認後、「検認済証明書」を受領(ずりょう)する

・ちなみに検認を行う日には、必ずしも相続人全員が立ち会わなくてもよいこととなっています。ただし、申し立てた人は必ず出席しなければなりません。
 

9.確実に遺言するには、公正証書遺言書を作成しましょう

・公正証書遺言書は、証人2人のもとで、弁護士などの公証人が遺言者の口述から作成するため、間違いが少ないというメリットがあります。

・また、原本は公証役場に保管されます。確実に遺言をしたい場合は、公正証書遺言書を作成することをお勧めします。
 
・公正証書遺言書は通常公証役場で作成しますが、遺言者が公証役場まで行けないなどの理由がある場合は、公証人が遺言者のいる病院や自宅まで訪問して作成することもできます。ただし、この場合は公証人へ出張手当と交通費の実費を追加で払う必要があります。

10.自筆証書遺言発見時には相続放棄期限に注意!

・遺言書が出てきたら、直ぐに動く必要があります。

・なぜなら、検認が終わるまで申し立てから1か月以上掛かる場合があるからです。

・それまでに、被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本の取得、すべての相続人の戸籍の収集だけでも1ヶ月以上掛かるでしょう。

・そして、重要なのは、相続放棄の期限が相続の開始を知ってから3か月以内となっていることです。

・財産調査によって、多額の債務が発見された場合に、相続放棄をする相続人が出ることが考えられますので、迅速な手続きが必要です。

・なお、期限内に相続放棄の申述が間に合わない場合には、家庭裁判所に対して相続放棄の期間伸長の申立てを行うことで、期間を伸長できる可能性があります。

・難しい場合には、早い段階で弁護士などの専門家に相談することも選択しましょう。