「遺産分割協議書」は何に使うの?どのように作ればいいの?

・今回は、「遺産分割協議書」について、みていきます。

・50代、60代そして定年後に、高齢の親御さんの万が一のときに慌てないよう、覚えておきましょう。

目次

  1. 1.遺産分割協議書とは
  2. 2.遺産分割協議書の主な内容
  3. 3.こういうときは「遺産分割証明書」が便利!
  4. 4.遺産そのもので分けるか・お金で分けるか・金銭清算をするのか悩ましい!
  5. 5.遺産分割をしないで放置したらどうなるのか

1.遺産分割協議書とは

・遺産分割協議書とは、民法上で定められた法定相続分の割合以外の方法で遺産を分割した場合に、それを後々の疑義が起きないよう証拠として残しておくものです。

・遺産分割は、口頭ベースでも法律上の効力は生じますが、通常は遺産分割協議書を作成して書面に残します。なぜなら、遺産分割協議がされたことを相続人間だけではなく対外的に証明していかなければならないからです。

・作成した遺産分割協議書は相続人が個々で保管するだけではなく、対外的に証明する書面としてたいへん重要なものです。

・提出先から遺産分割協議書には実印が押されていることは確実に要求してきますので必ず相続人全員が実印を押したものを用意します。

・遺産分割協議書の提出先として想定されるのは、預貯金口座のある金融機関だけでなく、不動産の名義変更がある場合には法務局へ、相続税の申告がある場合には税務署へ提出が必要となります。

・なので、遺産分割協議書を作成する場合は、相続人が保管するだけではなく、適宜役所に提出する分も作成しておいた方がいいです。

《遺産分割協議書の主な提出先》
1.金融機関(銀行・信託・証券会社)

金融機関は、相続人間でどのような遺産分割をしたか確認するために、遺産分割協議書の提出を求めてきます。
2.法務局
相続登記を申請する際に、法定相続分の割合で分割する場合を除いて、遺産分割協議書が添付書面となります。
3.税務署
相続税申告の際に、遺産分割協議書が添付書面となります。
4.運輸支局
亡くなった方から相続人へ自動車の名義変更をする際に、遺産分割協議書が添付書類となります。

2.遺産分割協議書の主な内容

・被相続人:父 細田太郎の実家の不動産と預貯金を、相続人の二人の子ども:長男 一郎、次男 次郎が、相続する(配偶者は先に死亡)ケースで、本当に典型的な事例を使って具体的に解説します。

・被相続人の情報を住民票や戸籍謄本を見ながら記載します。氏名(戸籍謄本の記載とおり)、死亡日、住所地、本籍地、登記簿上の住所を記載していきます。

被 相 続 人 細田 太郎(令和〇年〇月○○日死亡) 
最 後 の 住 所  〇〇市中央区〇丁目〇番〇号
最 後 の 本 籍  〇〇市中央区〇丁目〇○番地○
登記簿上の住所  〇〇市中央区〇丁目〇番〇号

・相続人全員によって遺産分割協議が成立したことを記載します。

被相続人細田太郎死亡により相続が開始し、共同相続人全員により協議を行った結果、後記のとおり遺産分割協議が成立した。

・不動産の目的物を登記事項証明書(登記簿謄本)を見ながら正確に記載します。住所ではなく登記簿謄本のとおり書きます。法務局の審査は厳しいので一字一句間違いのないように記載しなければいけません。

1. 細田一郎 が取得する遺産 
  所     在   ○○市中央区〇丁目
  地     番   ○○番○
  地     目   宅地
  地     積   △△.△△㎡ 

  所     在   ○○市中央区〇丁目
  家 屋 番 号   ○番○
  種     類   居宅
 構     造   木造瓦葺2階建
  床  面  積   1階 △△.△△㎡
            2階 △△.△△㎡

・預貯金の遺産分割内容を記載します。詳細に記載してもいいですが、支店名まで記載すれば問題はないです。

2.被相続人名義の下記の金融機関に有する預貯金債権及び有価証券等については、すべて換金のうえ、相続人細田二郎が相続する。 
 [金融機関等の表示]
 (1)ゆうちょ銀行
 (2)三菱UFJ銀行○○支店
 (3)みずほ銀行○○支店

・後々になって相続財産が見つかってしまった場合に備えて、この文言を記載しておくと便利だと思います。ただし、プラス財産だけでなくマイナス財産もここに含まれますので記載する場合には注意をしてください。

3.その他の財産及び債務について
本協議書に記載のない遺産及び後日遺産が発見された場合は、当該遺産について、相続人細田二郎が相続する。

・最後に相続人全員が署名捺印を行います。ハンコは、認印ではなく必ず実印を押すようにしましょう。

 以上のとおり、相続人全員による遺産分割協議が成立したので、これを証するため本書を作成し、署名捺印する。
令和〇年〇月○○日 
【相続人細田一郎の署名捺印】
  住 所 

  氏 名            実印
 
【相続人細田二郎の署名捺印】
  住 所 

  氏 名            実印

・遺産分割協議書に署名捺印(実印)をして、相続人全員の印鑑証明書も合わせて添付して提出するのが相続実務ですが、この印鑑証明書には有効期限が存在します。

・有効期限は、各提出先が各自に期限を設けていますが、「3ヶ月」と「6ヶ月」のいずれかに設定している場合が多いようです。登記申請時には期限の定めはありません。

どの提出先(法務局・税務署・金融機関)も実印が押されていなければ受け付けてくれませんので実印を押す必要があります。なお、もし実印登録をしていない相続人がいましたら、事前に役所で実印登録をしてもらいましょう。

・法務局と税務署では住所氏名がパソコンで印字されたものでも問題ありませんが、金融機関によっては受け付けてくれない可能性があります。

・高齢な方の自署が難しければ事前に金融機関に確認をされた方がいいです。

3.こういうときは「遺産分割証明書」が便利!

・相続人が別住所にお住まいの場合は、遺産分割協議書よりも「遺産分割証明書」で作成した方が便利だと思います。

・通常、遺産分割協議書は、その書面に相続人全員が連名で署名捺印(実印)をして行います。しかし、遺産分割証明書の場合には、連名で署名捺印をする必要がありません。お仕事や家庭の事情で皆さんお忙しいと思いますので、持ち回りや郵送の方法で全員分の署名捺印をすることができます。

・例えば、相続人が3名いるのなら、同様の内容の遺産分割証明書3通を作成し、相続人全員がそれぞれ署名捺印した遺産分割証明書3通を合わせることで、遺産分割協議が成立したことになるのです。

・つまり、遺産分割協議書と違って、遺産分割証明書なら各相続人が別のタイミングで署名捺印をすることができますので、わざわざ集まって協議をする必要がありませんし、持ち回り等の面倒なことをする必要もありません。

・相続人が日本全国に散らばっていて簡単に集まることができないようなケースの場合、遺産分割協議書にしてしまうと、一枚で作成した協議書を「順番に」相続人の自宅へ郵送して回さなければいけなくなってしまいます。

・何人もの相続人の自宅へ郵送していては時間がかかってしまいますし、途中で書き損じが生じてしまうと全部やり直しになってしまうリスクが生じます。

・ですが、遺産分割証明書にすることで「一斉に」各相続人の自宅へ郵送することが可能になりますので、時間的な短縮をすることが可能になります。

・相続人の人数が多ければ多いほど、遺産分割証明書にするメリットが大きくなりますので、遺産分割証明書は専門家の実務にも多用されている方法です。

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4.遺産そのもので分けるか・お金で分けるか・金銭清算をするのか悩ましい!

・現物分割(財産そのもので分ける)。現物分割とは、相続財産そのままの形でそれぞれの相続人へ取得する方法で最も一般的な分割方法です。

・自宅についてはA相続人へ、預金はB相続人へ、株式はC相続人へといったように相続財産をそのままの形で分割するため、比較的早くスムーズに分割することができるのがメリットです。

・換価分割(お金に換えて分ける)。換価分割とは、相続財産そのものを分けるのではなく、一旦売却して現金化(換価)したうえで、お金で分ける方法です。

・そのままで分けることができない不動産を売却してお金で分ける場合にこの方法を使うことになります。なお、相続不動産は一旦相続人の誰かに名義変更をしてからでないと売却できませんので、法務局の名義変更(登記申請)をする時間がかかります。

・代償分割(金銭清算で分ける)。代償分割とは、不動産などを相続人のうち一人が取得する代わりに他の相続人に対して差額の金銭を支払うことによって、相続人の不公平を解消する方法です。つまり、お金で清算をするという形になります。

・しかし、この方法を利用する場合には、相続人に支払い能力があることが条件となりますので、この方法には家庭裁判所の消極的な考えを持っており、実務的にはあまり使われていないようです。

・3種類の遺産分割について触れて書きましたが、原則的に現物分割の方法を採用して、不動産を換価して分け合う場合にのみ現物分割と換価分割の方法を併用して遺産分割を行うというのが、実務上では多いようです。

5.遺産分割をしないで放置したらどうなるのか

・遺産分割をいつまでにやらなければいけないとか、期限が過ぎると何か罰則を受けるとか、現行法ではそのような制度はありません。

・考え方としては、被相続人が所有していた財産は、相続開始時(死亡時点)において、相続人全員に法定相続分の割合で実体上承継されます。そして、遺産分割が成立したと同時に、遺産分割の遡及効(遡って生じる効力のこと)により、相続開始時に、当該遺産分割の内容で相続人が財産を承継したことになります。

・よって、遺産分割に期限等はありませんので、相続人全員が必要なタイミングで遺産分割をすればいいことになります。

・遺産分割を放置することにメリットはありませんので、なるべく早く協議すべきなのは間違いありません。では、遺産分割を放置したことに対するデメリットとは、どんなものがあるのでしょうか?

・遺産分割を放置することで、大きく3つの面からデメリットが生じます。①相続手続きが進まない、②相続人の複雑化(数次相続の発生)、③税務面の不利。

・①相続手続きが進まない:遺産分割がなければ、相続手続きを進めることができません。不動産の名義も被相続人のままですし、預貯金も解約することができません。遺産分割がなければ、相続財産は相続人全員の共有状態のままとなりますので、誰が相続不動産を管理するのか定まらず、費用立替えの部分でも宙ぶらりんのままになってしまいます。

・②相続人の複雑化(数次相続の発生):遺産分割が未了のまま放置をしてしまうと、相続人のうちの誰かが死亡してしまうことがあります。これを「数次相続」というのですが、数次相続が発生してしまうことで、新たな相続人が現れてしまい、余計に遺産分割の成立が難しくなってしまいます。

・③税務面の不利:遺産分割が行われないことで税務的に不利なことが発生します。例えば、相続税についての小規模宅地等の特例や配偶者控除の適用は、原則として相続税申告期限(10ヶ月)までに遺産分割が成立していることが要件となります。
・そこで相続税申告の期限である10ヵ月以内を目安とするのが一般的です。

・相続税申告が必要なケースでは、遺産分割に期間制限がないとしても、この申告期限に間に合わせなければいけない関係上、放置しておくわけにはいきません。つまり、遺産分割に期限が存在しなかったとしても、実際問題として、この相続税申告の期限によって遺産分割を行うことを強制しているようなものです。

・期限までに相続税申告をしなかった場合には、各種控除や特例が使えなくなる場合があり、納付が遅れたら延滞税や加算税が発生するので、期限までには必ず申告をしなければいけません。