✅中高年の昭和の働き方-メンバーシップ型は悪いのか!✅しかしジョブ型雇用は広がっていない!🌈優先すべきは職場の「つながり」を取り戻すことかも?

今回は、2023.1.12日経ビジネスオンラインに掲載された健康社会学者の河合薫さんの記事「『上司と一緒にいたくない』日本人と『仲の良い職場』重視する世界」から、昭和の働き方と云われている日本の「メンバーシップ型」雇用と、欧米型の「ジョブ型」雇用との違いについて改めて考えてみます。

1.ジョブ型雇用の広がりの実際

・ジョブ型雇用は新型コロナウイルス禍で、在宅勤務が急速に広まったことで一気に注目を集めました。

・20年7月には、KDDIが、富士通はジョブ型雇用を20年度に、課長級以上の約1万5000人を対象に導入し、一般社員にも広げていく計画を発表しました。この他にも日立製作所、三菱ケミカル、資生堂、カゴメなどが相次いで、ジョブ型の導入を表明しました。

・「ジョブ型にすれば、昭和の働き方と決別できる!」「ジョブ型は日本経済再生の突破口になる!」「ジョブ型になれば能力次第で賃金アップが期待できる!」「ジョブ型は社員の自律性向上の切り札になる!」「ジョブ型が広まれば雇用の流動化が期待できる!」、といった具合に、多くの見出しがメディアで飛び交っていました。

・では、実際はどうだったか?河合さんはご自身のリサーチ結果として、「ジョブ型を導入する予定はない」とする企業が圧倒的だったといいます。

・それを裏付ける形で、日本経済新聞が大手企業を対象に実施した調査でも、ジョブ型雇用は言われるほど普及していませんでした。「導入済み」が10.9%、「導入予定」が12%で、わずか20%にとどまっていたのです(23年1月5日付日本経済新聞朝刊「ジョブ型試行錯誤」)。

・66.1%もの企業が「導入予定はない」と回答している状況を鑑みれば、この先も広がるとは考えにくいと河合さんは予測しています。

・ジョブ型の導入を進める企業も、導入する予定がない企業でも、現場のリーダーたちが期待するのは「個」の力を生かす働き方なのです。「会社のオーダーに合わせて仕事をするだけでは、生産性の向上は期待できない」「社員のモチベーションを高めたい」「自律した働き方をしてほしい」「個の力をもっともっと引き出したい」、といったリーダーたちの声をあるごとに聞いてきたのでした。

・会社主体の働き方である「メンバーシップ型」から、個の力が問われる「ジョブ型」になれば、自律と自由を社員は手にできるのではないか?会社という組織の中で、与えられた目標を達成するためだけの仕事をこなすのでは、企業は生き残れない。会社も頑張るから、君たちももっと頑張ってほしい。

・そんな現場を率いるリーダーたちの思いを実現するための手段になり得るのが「ジョブ型雇用」であり、たとえジョブ型にしなくとも、なんとかして社員のモチベーションをあげたい! と、四苦八苦するリーダーが山ほどいたわけです。

2.日本は世界で最低の上司との関係、コミュニケーションレベル

・そういった企業のリーダーたちに河合さんは、「会社はコミュニティーなのだからコミュニティーとしての機能を、もっと大切にすべきだ」「『個』の力を引き出したければ、『つながり』にもっと投資をしてほしい」と訴えてきたそうです。

・前向きな力を引き出すには、「元気になる力」が必要不可欠です。河合さんが専門の健康社会学ではこれを「健康要因(salutary factor)」と呼びます。

・職場での元気になる力とは、能力発揮の機会であり、裁量権であり、良好な人間関係である。休養、趣味、大切な人・家族・友人、収入、社会的地位などの心理的、社会的、経済的要因も元気になる力です。

・これまで得られているエビデンスなどから、「個のパフォーマンスを引き出す元気になる力」は、大きく5つあるそうです。

《 「個のパフォーマンスを引き出す元気になる力」5分類》
 1つ目は「仕事の要求度」だ。仕事の要求度の高さは働く人への期待でもあるため、個人のやる気を引き出す要因になる。2つ目は「裁量権」。決定権と言い換えてもいい。3つ目は「報酬」。金銭的な報酬はもとより、それ以上に重要なのが「あなたがいてくれてよかった」「ありがとう」といった心理的報酬である。4つ目は「公平性」。ここでの公平性とは、「私は尊重されている。会社や同僚たちが(私の)存在を認めてくれている」という感覚のこと。
 5つ目が「コミュニティー」。メンバー同士が助け合っていること、相手を信頼すること、相互依存の関係にあることである。このようなコミュニティーがあってこそ上記4つの要因は最大限に機能する。いわば、「もう無理」と個人がストレスの雨にびしょぬれになったときの「大きな傘」と言えよう。

・日本の生産性の低さやモチベーションの低さは、メンバーシップ型という、「個」を捨て、会社のメンバーになることに起因すると考えている人たちが多いですが、真の自立とは依存先を増やすことであり、相互依存があってこそ「個」の力は向上するのだと、河合さんは述べます。

・そこで、データを示します。日本(東京、埼玉、千葉、神奈川の1都3県)、米国(ニューヨーク)、フランス(パリ)、デンマーク、中国(上海)で働く大卒以上の30代、40代の人間関係や働き方、企業との関係性の実態を明らかにすることを目的にしたアンケートによって、日本が他国とは異なる傾向を示すことが分かったといいます。

・「勤務先の上司との人間関係」について、「一緒に過ごすと活力がわく」「仕事がうまくいくように助言や支援してくれる」「キャリアの新たな挑戦を後押ししてくれる」「もしも生活に困ったら助けてくれる」の全ての項目で、日本は5カ国中最下位。ジョブ型が徹底している欧米諸国より圧倒的に低く、「勤務先の同僚との人間関係」も同様の結果でした。

・「働く上で重視しているもの」では、「仲が良く楽しいチーム」「目標に向かって努力するチーム」「キャリアアップを支援する上司」というコミュニティーに関する項目が、他国では上位にランクしていたのに対し、日本は圧倒的に低かったのです。

・日本のメンバーシップ型とは、一体何を意味するのか?日本の会社員は会社の仲間に溶け込むことを優先する、だから個の力が発揮できないと言われるけど、この結果を見る限り、その見解自体、バイアスがかかっているのではないか?と河合さんは疑問を呈しています。

・自律・自立とは、依存先を増やすことであり、人は誰かに頼られたり、誰かに頼ることができたりしてこそ、自分の足で踏ん張れるわけです。日本は「個」という言葉に縛られ、そんな人間の摂理を忘れてしまったのではないか、と問いかけます。

3.会社はコミュニティーなのだから…「メンバーシップ型」の良さを見直すべき

・ 欧州のジョブ型とは、「専門職」を意味します。つまり、経理は一生経理だし、賃金は上がりません。その代わりにパートタイム労働者との賃金差がない(労働時間の差による賃金差のみ)ことになるわけです。

・一方、メンバーシップ型はマイナス面ばかりが指摘されますが、さまざまな部署を経験できるし、転勤なども成長のきっかけになり得るし、誰もが社長を目指せるし、素人が経営者になれるのは日本だけ、と言っても良いくらいだ、と指摘します。

・「個」にこだわる前に、相互依存できているかどうかを見直してほしい、ジョブ型雇用は、伝家の宝刀ではない、と記事で結んでいます。

・いかに優秀な人でも、自分一人で仕事を完遂するのは困難であり、組織の中のさまざまな人がチームにならなければ大きくて重要な仕事を完成させることはできません。

 ・忘れてならないのは、自分を取り囲む身近な世界の他者との「質のいい関係」が前提条件であるということです。

・これを構築するには、コミュニティーとしての「職場」づくりに回帰することではないでしょうか。

・最近はめったやたらと「自立した個」を重んじる風潮があります。社会的存在である人間にとって、唯一無二の「個」などあり得ません。

・人類は「互いに依存しあう集団」をつくることで生き延びてきたわけで、有史以来かわりません。それが「コミュニティー」です。

・職場という森を豊かにするのは、そこで働く「人」です。中高年は、一歩引いて、職場で質のいいつながりを作るところから始める必要があるのではないでしょうか。