老後のために今を我慢するよりも、今生きることの喜びを享受しよう!-『孤独の哲学「生きる勇気」を持つために』(岸見一郎著)が定年世代に響くのにはわけがある!
・定年をターニングポイントにして、これまでの人生で経験したことのない「お金」、「働き方」、「生き方」、「家族関係」、「人間関係」など様々な課題や難題が起きてきます。
・これらをリアルタイムで経験し、研究してきた同世代の筆者が発信しています。
・noteの投稿はこれまでに100本を超えました。
・今回は、アドラー心理学を扱った『嫌われる勇気』で有名な哲学者の岸見一郎先生の書籍『孤独の哲学「生きる勇気」を持つために』(中公新書クラレ)、『定年をどう生きるか』(SB新書)から定年世代の不安の本質について一緒に考えていきます。
・定年世代の幸せづくりのヒントになれば嬉しいです。
目次
- 1.アドラー心理学と自身の「心筋梗塞」
- 2.将来のために今を我慢しても、期待した将来がやって来る保証はどこにもない!
1.アドラー心理学と自身の「心筋梗塞」
・哲学者、心理学者の岸見さんは1956年、京都の生まれです。同世代ですね。
・京都大学大学院文学研究科博士課程満期退学(西洋哲学史専攻)。奈良女子大学文学部非常勤講師などを務めて来ました。
・ギリシャ哲学の研究者として知られていた頃、並行して、1989年からアドラー心理学を研究。大学院時代には母親の看病のために半年間学校に通うことができなかったが、その間に参加していた哲学の読書会によって、哲学の有用性を認識したと振り返っています。
・2013年に刊行した古賀史健との共著『嫌われる勇気』が累計170万部を超える大ベストセラーになりました。
・岸見さんは、50歳のときに心筋梗塞で倒れ、長い入院生活を余儀なくされています。
・岸見さんが「今、ここ」を大切にするようになったのは、アドラー心理学の研究に加えて、ご自身が大病を経験したことも関係しています。
・病気をしたことの影響は人間にとって大きなことです。
・岸見さんが、心筋梗塞で倒れた直後は、自分がいつまで生きられるのか不安になり、病院のベッドで毎晩、輾転反側(てんてんはんそく)していました。
・主治医の先生に睡眠導入剤を処方してもらったのですが、すると今度は、「翌朝目が覚めなかったらどうしよう」と不安になり、睡眠導入剤を飲むのが怖くなったそうです。
・不安が取り除かれたのは、意識が他者に向くようになってからです。入院当初は四六時中、自分のことしか考えられませんでした。
・しかし、病状が日々よくなっていくにつれて、家族や友人など、自分が生きながらえたことを喜んでくれている人たちがいることに気づきます。自分は寝たきりで今は何もできないけれど、それでも生きているだけで「よかった」と思ってくれる人がいると思えてきました。
・心筋梗塞の経験から、何もできずにベッドに寝ていても、誰かの役に立てているのだと貢献感を持てるようになりました。すると、毎晩薬を飲んで眠ることが怖くなくなりました。
・そして、毎朝元気に目が覚めることに感謝するようになった。「先のことはどうなるかわからないけど、とりあえず今日一日を精一杯生きよう」と、心から思えるようになったそうです。
2.将来のために今を我慢しても、期待した将来がやって来る保証はどこにもない!
・ここから、著書をご紹介します。
・はじめに、『孤独の哲学「生きる勇気」を持つために』(中公新書クラレ)です。
・この本は、対人関係、病気、老い、死などを自らの経験と哲学を重ねた人生論になっています。
孤独の哲学-「生きる勇気」を持つために (中公新書ラクレ 762)www.amazon.co.jp
924円(2022年07月17日 16:04時点 詳しくはこちら)
・わたしがもっとも興味を惹かれたのは、「未来に本当の人生がある」と思い込まされているという部分です。
・老後には備えない方がいいとも述べています。この真意はどこか?
・岸見さんは、備えておかなければならないことは多々あるという点は認めたうえで、老後に備える(「終活」と捉えていいです)ために「今」生きることの喜びをふいにしては意味がないと、強調します。
・誤解のないように、もう少し補足します。岸見さんはある対談で、「終活」について、次のように語っています。
・「終活」が悪いとは思いません。特に財産のある人は、遺産相続などで遺族がもめないよう、生前からきちんと準備しておく必要もあるでしょう。
・しかし、自分の人生について、将来のことはあまり考えないほうがいいのではないかと思います。先々のことを考えてしまうと、どうしても「今」が疎かになりますから。
・人はいつか、必ず死にます。しかし、その事実をいたずらに怖がっていると、「今、ここ」に生きる喜びをふいにしてしまうことになります。
・「終活」に意識を向けないほうが老いを楽しめるし、幸せな老いを過ごせるのではないかと思います。
・老後の生活を全く考えなくていいといっているのではなく、生きる姿勢の話です。
・続けて氏は、「この先、何があろうと、今が本番」であり、先の人生のために今を楽しまない生き方を否定します。
・これはアドラー心理学に通じている考え方です。過去や未来ではなく、現在、今に焦点をあてた考え方です。
・また、未来に不安を抱く、怖れに囚われている人に対しては、「未来は未だ来ていない」というより、「ない」。未来があるという保証はどこにもないと、言い切ります。
・さらに、起こった出来事が本当に不幸なのかどうかは、少なくともその時点ではわからないとも述べています。先々、そのことが幸福であるかもわからないのです。
・続いて、もう一冊。『定年をどう生きるか』(SB新書)。
定年をどう生きるか (SB新書)www.amazon.co.jp
913円(2022年07月17日 16:05時点 詳しくはこちら)
・この本は、ご自身も定年世代であることを反映し、人生の後半に向けて自分を見つめ直すために、「定年」という環境変化への向き合い方を述べたものです。
・お金や健康といった不安はもちろんあるわけですが、岸見さんは、これらの問題の本質を対人関係の変化にあると論じます。
・慣れ親しんだ職場を離れ、自分を仕事や家族、社会との関係を再定義し、いかに貢献感を持ち、新たな人生を充実させるかが大切である、と説きます。
・小さくても大きくても、新たなことにチャレンジしたり、今までと違うことに挑戦するためには勇気が必要です。
・アドラーは「自分に価値があると思えるときにだけ、勇気を持てる」と言っています。
・「価値」は、ありのままの自分を受け入れることから生まれます。働くことを止めても、自分の価値は生産性ではなく、生きていることにあると知ることが大事です。
・アドラーは「他者貢献」といいますが、「共同体に貢献していると感じられるときに、自分に価値があると思える」と言っています。つまり、自分は役に立っている、貢献していると感じられることで、自分に価値があると思えるようにすることも大切です。
・家族、仲間、サークル、町内会等々。他者はたくさんいます!
・岸見さんのお話しは、一見、手厳しい批判に聞こえますが、実は、本質を突いているように見えます。
・しかし、過去のことを思って後悔したり、未来を思って不安になったりするのは、今を生き切れていないとも述べています。できることを毎日していけば、気がつけば長生きしているかもしれません。
・わたしたち定年世代は、どんな状況にあっても、他者、社会とのつながりを忘れることがあってはならないのではないでしょうか。日日是好日、の気持ちで今を精一杯生きたいものです。